ぱらぱらめくる『全ての概念はKan拡張である』

  • こちらのサイトの内容が本になったそうだ

alg-d.com

  • この本に進む前に、別のPDF資料(哲学者のための圏論入門 森田真生(独立研究者))で、そもそも圏論とはどういう枠組み化を確認しておく
    • 対象と関係とで考える仕組み
    • 集合では対象が集合であって、集合には要素があって、その要素ごとに考えるのに対して
    • 圏論では対象の中身には立ち入らずに、対象を塊として考えることに特徴がある
    • 集合での考え方をinternalな視点、圏論での考え方をexternalな視点と言うことができる
    • exeternalに考えて(要素を扱わずして)、(集合を伴う場合には)集合の写像で必要な単射全射全単射が定義できるということは、圏論のexternalな視点を理解する上の鍵になる
    • また、集合を集合たらしめる「要素」が不要になるので、集合ではないものも対象にできるのが圏論
    • 集合ではないものを対象にして圏を定め、圏と圏との関係を見ることで、集合とは限らない多彩な数学対象を扱うことができて、かつ、数学対象同士の対応を扱うことができる
    • このようなアプローチの背景には、様々な数学対象を代数化して、同型判定しやすい数学対象で議論し不変量を取り出すという考え方があるだろう(参考:こちらも)
    • 圏論は集合と立場を違える、という最初の説明とは逆説的になるが、集合自体も特別な性質を持った圏として定義できる
    • 代数における二項演算では、演算が要素集合で閉じているので、代数構造も圏対象から同じ圏対象への射を持つという形で捉えることができる
    • 圏と圏との関係自体を圏と捉えることも可能で、階層化できる
  • 圏論とは何か
    • 「群として同型ならば、集合として同型である」したがって、「2つの群をそれぞれ集合に対応付けて、集合同士が同型であるかを調べ、集合同士が同型でないことが示せたならば、元の群同士は同型ではない」と言えることになる
    • このように考えるときに、群の圏と集合の圏と、群の圏から集合の圏への関手とを考えるのが圏論
    • 同様に「位相空間同士が同型ならば、位相空間に紐づく基本群は同型である」を使って、「(取り扱いがより容易な)基本群同士の同型を調べ、それが同型でないことが示せたならば、元の位相空間同士は同型ではない」と言える
    • この際、位相空間の圏と基本群の圏と、位相空間の圏から基本群の圏への関手を考える
    • 構成する概念と記法
      • 用語としてはcategory in nLabに基づくのが良さそう
      • 1つの圏 (a category)は、二つの集まり collections の組からなる。二つの集まりは「対象の集まり」と「射の集まり」である
      • このことをC:= (Ob_C,Mor_C) = (C_0,C_1)と書くことにする
        • ここでの集まりは、圏論では集合論に基づかない議論がなされる(らしい)ことから、集合のことを忘れて、「一緒くたにできるものの集まり」というくらいのニュアンスが良いかもしれない
        • 集まりは何かの集まりとみなせるものであって、それは空(から)かもしれないし、1つの要素しか持たないかもしれないし、複数の要素を持つかもしれない
        • Ob_C=C_0の元が対象(an) objectであり、Mor_C=C_1の元が射(a) morphism もしくは (an) arrowである
      • 対象 object(s)と射 morphism(s)/arrow(s)との関係
        • グラフ理論での有向グラフの頂点と有向辺とに相当する
        • 射の始点(始object)をドメイン対象・ソース(source)対象と言い、終点(終object)をコドメイン対象・標的(target)対象と言う
        • 射 f のドメイン対象・ソース対象とコドメイン対象・標的対象とがそれぞれa,bであるとき、a=dom(f),b=codom(f)と書いたり、f : a \rightarrow bと書いたりa \xrightarrow{f} bと書いたりする
        • ドメイン対象とコドメイン対象とを共有する射の集まりをhom-setsと呼ぶ。圏Cにおいて、a,bなる対象をそれぞれドメイン対象・コドメイン対象とする射の集まりをHom_C(a,b)と書く、Hom(a,b),C(a,b)と書いたりもするし、Mor(a,b),Mor_C(a,b),C_1(a,b)と書いたりもする
      • 射は合成できる。この合成は射に定められた二項演算である。合成される射と合成できる射とには満足すべきドメイン対象とコドメイン対象との関係ルールを定めるのがよく、そうなっている
      • 恒等射が存在するようにしておくことで圏論がうまく回る。したがって恒等射の存在をルールとする
    • 圏の集まりと関手Functor F
      • 二つの圏を関手Fでつなぐ
      • 対象は a \rightarrow F(a)、射はf \rightarrow F(f)となり、F(a) \xrightarrow{F(f)} F(b)となる
    • 同型
      • 圏Cの2つの対象a,bとが同型という概念がある
      • 集合の圏の場合には、a,bはともに集合であり、aとbとが同型であるとは、aとbとの間に全単射写像が存在することである。この全単射写像に対応するのが、圏の同型射である
      • 群の場合には、群同型と群準同型とがある。群同型と群準同型の共通点は、2つの群の間の要素の対応と、群演算の対応との両方が取れていること。逆に群同型と群準同型の違いは、2つの群の間の要素の対応が全単射かそうでないかである。群の圏での同型射は、群同型ではなくて、群準同型に対応するという。ちなみに位相空間の同型射は同相写像のこと
      • 圏の同型射には、「逆射」が存在して、それはただ一つ存在する
    • 圏の例、圏と関手の例
      • 対象=集合、射=集合から集合への写像、射の合成=集合から集合への写像は合成して写像となる、恒等射=恒等写像:集合の圏
      • 対象=群、射=群準同型、射の合成=群準同型関係を合成しても相変わらず群準同型関係、恒等射=ある群が自身と群準同型であることに相当:群の圏
      • 対象=位相空間、射=連続写像(位相を変えない変形)、射の合成=連続写像を合成すると連続写像、恒等射=動かさない写像位相空間の圏
      • 群の圏と集合の圏とを関手でつなぐことができる。群は集合と二項演算の組であり、集合はその名の通り集合であって二項演算は存在しない。関手で2つの圏をつなぐことはできる。群の圏の群の集合と集合の圏の集合とに全単射を置くことはできるが、集合の圏では演算のことを取り扱うことはできない。このように、情報・構造の一部が失われる形式で結ぶ関手を忘却関手と呼ぶ
      • 対象=ある特定の点を指定した位相空間、射=連続写像:基点付き位相空間の圏
      • 基点付き位相空間を考えるとき、その基点から出てその基点に戻るループの区別を考えることができる。これを、この位相空間のこの基点における基本群と言うから、基点付き位相空間の圏と、基点付き位相空間に付随する基本群の圏との対応が取れる。この対応を取るのが両圏を結ぶ関手になる
      • 集合も圏
      • 群も圏、群の演算表に相当するルールが射の集まり全体として存在する。単位元の存在はId射の存在に対応する。元の数だけ射がある
      • 順序集合も圏
      • 圏の集まりと関手の集まりとを、対象の集まりと射の集まりとみなすとそれも圏
    • 圏は図で表すこともできる
    • 共変関手と反変関手と反転圏
    • 関手は、圏Cから圏Dへの矢印。Cの対象をDの対象に移す。Cの射をDの射に移す。Cの射とDの射とで、射のドメイン対象とコドメイン対象の関係が維持されれば共変関手。射のドメイン対象とコドメイン対象がひっくり返れば反変関手
      • 普通の関手は、a \xrightarrow{f} bF(a) \xrightarrow{F(f)} F(b)とするが、a \xrightarrow{f} bF(a) \xleftarrow{F(f)} F(b)のような関係も考えられる。対象を結ぶ射の向きが関手によって逆になっている。このような関手を反変関手という
      • ある圏Cでのa \xrightarrow{f_C} bに対して、対応する「逆の圏=反転圏」C_{op}を考えてa \xleftarrow{f_{C_{op}}} bとすると、反変関手によって現れるF(f)f_{C_{op}}を共変関手で移したものとなる
  • 圏の構成例
    • 直積圏
    • 直和圏
    • スライス圏:圏Cの対象xでスライスすることで、xをコドメイン対象とする射を対象とする圏を作る。その作られた圏における射は、xをコドメインとする射を持つ対象を結ぶ射とする(らしい)。言い換えると、対象xでスライスすることで、対象xの周りの射を対象と射とに振り分けるような構成方法になっている
    • コスライス圏:スライス圏とは逆に、対象xをドメイン対象とする射を対象とする圏を作る
    • 部分圏・十分部分圏
    • 普遍性
      • 圏論では、関係性(関係性を図にした可換図式)に則って定義するので、次のような性質として普遍性は定義される
      • 「同じ条件を満たすもの(それが対象であったり、対象と射の組であったりする)があるのならば、射が一意に存在して可換となる」という条件によって定義されるような性質のこと全般
      • 例としては、直積、終対象、pullback、equalizerなどが挙げられている
  • 全ての概念はKan拡張である
    • 「〇〇って、××のことだよね」という比喩は圏論で言うところのKan拡張で表すことができます、ということらしい
    • 「CのXって、DのYってことだけど、それって、EのZがやっぱりDのYってことだよね」と言うとき、C,D,Eが圏で、CとD、CとE、DとEに関手関係が生じていて、3つの圏の関係性の定義にあるKan拡張がこの関手関係で定義されている、ということらしい
    • Kan拡張の定義には
    • 「同じ条件を満たすものがあるならば、自然変換が一意に存在して、ある合成が成立する」という条件が現れる
    • これは、圏において普遍性の定義に出てきた言い回しとほぼ同じ
    • 言い換えると、Kan拡張は、圏の集まりを対象の集まりとみなしたときに関手の集まりが射の集まりとみなされるが、その関係性の中に認められる一意な自然変換のことだが、それは、圏の集まりを対象とした圏における、普遍性の定め方みたいなものだよね、という意味合いで、(広い意味で)普遍性の一種、ということだ、と言っている(のだろう)