ぱらぱらめくる(めくれるか)『作用素環入門 I II』

作用素環入門〈1〉関数解析とフォン・ノイマン環

作用素環入門〈1〉関数解析とフォン・ノイマン環

作用素環入門〈2〉C*環とK理論

作用素環入門〈2〉C*環とK理論

  • 読む前に:抽象的な議論だけでは全く分かった感を得られない自分としえては、物理の「行列力学」を支える数学である、という「立ち位置」を確認してから以下を読むのがよい。行列力学では、こちらWiki記事にあるように
    • 行列力学が明らかにした物理量の非可換性は、量子力学における不確定性関係の構造を浮き彫りにした。』
    • 量子力学の他の表現法としては、シュレーディンガー方程式で記述される波動力学ファインマン経路積分法などが存在する。』
    • 『力学量A は 2 つの添え字 (m, n) で指定される要素の総体 \{A_{mn}(t)\}、すなわち無限次元の行列として表現される。行列としての力学量 A において、その各成分は下記に示すように e^{2 \pi i \nu_{mn} t} という振動形の時間依存性を持つ。 A_{mn}(t) = A_{mn}e^{2 \pi i \nu_{mn} t} 。ここで振動数 \nu_{mn} は リッツの結合法則 \nu_{lm} + \nu_{mn} = \nu_{ln}を満たし、特に\nu_{nn}=0である。また A はエルミート行列であり、A_{mn} = A_{nm}^{*}が成り立つ。』
    • さらに、この行列が「フーリエ係数の離散・量子力学バージョン」であることなどが見えてくる
  • はじめに
    • 量子力学を記述する数理構造
    • 量子力学と同じく「無限」「非可換」「位相」のみつどもえ
    • 無限に階層性
    • 弱位相
    • 無限次元線形代数
    • 「おおまかに言って数学は、視覚を通して感じられる世界を記述する幾何学、数学的構造を展開する代数学、それらの記述に際して現れる特異な状況を飼い慣らすための解析学に分類されている」
    • 離散的な自然数と連続量である実数をもとにして発達してきた数学に対して、量子力学の教え『これらの量をすべて複素Hilbert空間上の作用素を用いて考えよ』によって書きなおすのが作用素
      • 実軸上の連続関数はHilbert空間L^2(\mathcal{R})において関数を掛ける、「掛け算作用素」として考えよ
      • n個の点上の関数を考えるとき(離散のとき)には、n\times n対角行列として考えよ
      • 従来の数学は、対角化できる作用素が対応し、量子力学的世界、作用素環の世界全体では、対角化できない作用素も登場する
    • 自然数1は「極小射影全体の集合の名称」である。自然数nは「n次元の射影全体の集合〜無限次元複素Grassmann多様体につけられた名称」となる
    • 作用素環は有界作用素のなす多元環
    • 半群と同型、自然数・整数・実数・複素数のすべてが作用素環の枠組みにおさまる、その演算もおさまる
    • 作用素環には2つの系統
      • 行列環の高次元版
      • 無限を飼い慣らすことで登場した仕組みの版
    • 従来の数学に戻そうとすると無理が出るのは、行列が「新しい数の概念」であって、実数や複素数に戻そうとしても戻らないのと同じような関係がある
  • 1 関数解析からの準備
    • 局所凸空間、位相ベクトル空間、線形位相空間、ノルム、ノルム位相、ノルム空間、バナッハ空間、ノルム・半ノルムと退化、商ノルム、関数がノルム位相を持つ
    • 点列・順序と有向系
      • 収束有向系によって、点列でなくても極限・収束が扱えるようになる、完備、接触
    • 直和
      • ノルムの与え方は違えてもそれが導く位相は同じ
    • 線形作用素
    • 線形汎関数(1次形式)、双対空間、第2双対空間など、いわゆる関数を空間の点とみなす関数解析のもろもろ
    • Banach環
      • 関数解析において、関数であるところの「点」を使うには、関数と関数の積の演算の定義が関数がおかれているベクトル空間で取り扱えることが必要
      • ベクトル空間で積演算があるということは、ベクトル空間は和と定数倍があるものであるので、それに加えて積演算がうまく回るもののことであり、また、ベクトル空間は、次元を持っているものだから、結局、関数が配されたベクトル空間で積演算ができるっていうのは、和と(定数倍)と積がうまく動く次元のある仕組み〜多元環
      • 多元環がノルム空間であるときに、さらにうまいこと、積演算がノルムに関してある条件を満たしているときにノルム環、さらにそれがある条件を満たすとBanach環
    • スペクトル
    • Hahn-Hanachの定理
      • ある条件を満たす汎線形関数が存在することや、たくさん存在することが示されている
      • 線形条件を緩めた劣線形という概念
      • 凸性にも絶対凸のような「区分」があり、Minkowski汎関数とか、関数解析の中でも、このような条件緩和・特殊条件などの組合せによって、意味づけされるものがある
    • 弱位相と弱*位相
      • 二つのベクトル空間とその上の双線形汎関数、そこに現れる位相
      • 二つのベクトル空間の点ペアがあって、位相的にうまくいくとき、双対ペアと呼ぶ。関数たちがベクトル空間に配されて、そこで双対関係にある空間と結びついてるような、そんな空間で、単位球が存在することにより、その線形和・スカラー倍・積などが定義されていて、さらに線形稠密とか線形写像(この空間では点)の列とかが気になる(点列?有向系ではなく?)
    • Hilbert空間
      • これまでは行列環を拡張・一般化…することで進めてきたが、話しをいったん区切って、今度は、無限次元化する方向での話
      • なので、「普通の空間」の「無限次元化」であるHilbert空間からスタート
      • ノルムだけでなくて内積(ノルムと角)とでうまく行くとき、そんなノルム位相で完備な空間がHilbert空間。角がうまく行くことが要求されているので、「角」の中ではずせない「直角」が定められ、直角についてきちんとした規格直交系が登場する
      • 関数の直交関係が対象になるとフーリエ変換が登場する
      • フーリエ変換のように「直交関係の関数(群)」を扱うとなると、「直交関係にある元全体」としての「直交補空間」が登場する
      • 定数倍に関して言えば、実数定数倍に対して、複素数定数倍があって、その場合に複素共役を持ち出すことが便利なのは、普通に複素数を扱うときと同様で、それがこの空間・この空間での関数たちの演算にも効いてきて、それが「共役線形・共役空間」という概念になる
      • Hilbert空間の次元(規格直交系を考えているから、「次元」が直交系の成分数として現れてくる)が無現なのですよ、ということが出てきて、結局、ノルムに角を考慮した結果、無限次元の規格直交基底を持つ空間としてHilbert空間があることがわかる
    • Hilbert空間上の有界線形作用素
      • 2変数の汎関数f(\xi,\eta)\xiに関して線形、\etaに関して共役線形であるとき、fは半双線形であるといい、このような汎関数fに対しては、極分解f(\xi,\eta)= \frac{1}{4}\sum_{n=0}^3 i^n f(\xi + i^n \eta,\xi + i^n \eta)が存在する
      • さらにf(\xi,\eta)=\bar{f(\xi,\eta)}が成り立つとき、fをHermite的と言う
      • ちなみにn、内積はHermite的半線形汎関数
      • Hilbert空間の特徴は内積保存なわけで、そこに登場する作用素に、この内積を通じて結びつく2つの作用素の間の関係に随伴作用素と言うものある
        • 具体的には、(x \xi | \eta) = (\xi | y \eta)なる関係の有界線形作用素x,yがあり、このyをxの随伴作用素と呼ぶ。随伴作用素作用素自身だったり、作用素と随伴作用素の積が可換でそれが1だったり(ユニタリ)、作用素と随伴作用素の積が1ではないが可換だったり(正規)、というように特徴で分類・命名される。随伴の演算は「対合」の条件を満たす
    • Banach*環とC*環
      • 対合を持つ多元環を*多元環と呼び、それがノルム環の場合は対合ノルム環
      • 完備性もOKならBanach*環
      • さらに条件がきつくなってC*環
      • だからC*環っていうのは、距離と角とについてうまくいくHilbert空間上で、内積を通じて対応関係にある随伴作用素がもたらす対合という性質を満足し、かつノルムについてうまい具合な条件を満足する環のこと
      • n\times n行列全体がC*環の例
      • 有限次元のC*環はどれも行列環と同型
      • Banach*環に単位元を蒸かして単位的Banach環にある対合を定めると単位的Banach*環が得られる
      • 単位元を持たないC*環に谷元を付加したものを「単位元を付加したC*環」とわざわざ呼ぶ(のには理由があるのだろう)。まったくあてずっぽうかもしれないけれど、射影幾何で次元が一つ下がることと関係しているような1文がある。あてずっぽうの可能性90%くらい…
      • イデアル多元環幾何学的性質を調べる基本的概念
      • 極大イデアル、単純な環、準同型写像、同型写像、表現、非退化、忠実、繋絡作用素、同値、ユニタリ同値
      • 例。コンパクト作用素環。Calkin環
    • Banacha環におけるスペクトル
      • 抽象的に定義されたBanach環の解析を行う際に、何らかの形で、具体性のある形(実数または複素数の解析)へと帰着させるのがスペクトル論の目的
    • 可換Banach環のGelfand表現
      • フーリエ変換の代数的定式化
        • ある環の要素をよくできた別の環での要素に置き換える。そのよくできた別の環はスペクトルによって??コンパクト??に表現されているから「よくできた」と言える
    • コンパクト凸集合
      • 無限次元空間において幾何学をするときに最も基本的なものがコンパクト凸集合
      • それがC*環の言語で表される
    • この後C*環の正錐とか正線形汎関数、巡回表現、既約表現、純粋状態などが出てくるが、C*環という表記法でいろいろな概念が書き直せて、統一感が出るよ、という話と見ました
  • 2 von Neumann環
    • 作用素環は行列環の議論の無限次元への拡張として得られるが、無限次元特有の性質・問題があり、それが作用素環を考える意味でもある
    • von Neumann環の特徴:9種類の位相
    • 行列の対角化を無限次元Hilbert空間上で定式化したのがスペクトル分解
    • 対角化すれば、トレースも気になる
    • C*環の第2双対空間がvon Neumann環
    • L^p空間、L^{\infty}空間
    • テンソル積:線形について考えてくると、要素と変換とがすべて「テンソル界」のアイテムに見えてくる話はcoalgebraでも見た。ここでもテンソル積が出てくる
    • C*環ではなくてvon Neumann環の方でそれが出てくるのは、von Neumann環が「行列環」を出発点としているから
    • 積分分解