パラパラめくる『加群からはじめる代数学入門』
1 体上の加群(別名:線形空間またはベクトル空間)
- 実数は体。実数のベクトル空間は加群の例。加群はベクトル計算ができること、というのが素朴な考え方
- したがって、加群の理解は線形代数の計算やそれに伴う概念が重要になる
- 線形空間とは、ベクトルが張る空間
- 部分空間は、「全体を張らずに部分を張った空間」。部分を張るベクトルのセットは「狭い範囲」しか説明できない
- 線形空間から線形空間に写像することができる。写像の様子を表すのは行列。線形写像
- 広い線形空間にあるベクトルを、狭い空間に対応付けると、「空間はつぶれて小さくなる」。そのときに0になってしまうものが出てくる。それがカーネル
- 逆にある線形空間が線形写像によって、ある線形空間に移されるが、その写ったさきの線形空間が像
- 線形写像である行列は、そのカーネルを考えることでとらえる場合もあれば、その像を考えることでとらえる場合もある。両者は表裏の関係。表裏の関係であることは、その線形写像行列のランクとの関係で繋がる
- 線形写像による商空間は、カーネル部分が0になるから、0が足し算的に「不変」であることに着目すると、無視できる部分と考えることから出てくる。同一視する際の「無視される差分」がカーネル
3 環上の加群
- この章では、一変数多項式環に限らず、環における加群~ベクトル空間的扱いへの拡張をする
- カーネルが無視できる部分であり、商空間を考えるために使えることは相変わらず使える
- さらにイデアルという概念が出てくる。イデアルは多項式環では、多項式の部分集合であったが、要するにそれが加わっても無視してやるようなもの。また、そのような「無視」がうまく行くような部分集合になっているのがイデアル
- 「加わっても」「差し引いても」無視、がイデアルという表記が多項式環などでは出てくるが、次の章では整数・素数という話につながり、「割り算」の商と剰余とか、倍数・公倍数という形で説明がなされる。整数と素数との関係のような話のこと。これは、「同じものを何度も加える」ことが「掛け算」と関係し、「同じものを何度も差し引く」ことが「割り算」と関係することとつながっている。多項式環のイデアルの説明では、イデアル要素を1回差し引くことを定義表現に入れつつ、イデアルという部分集合では、「加えた・差し引いた後」に「もう一度加える・差し引く」ことが定義の中に書き入れられているので、結局、「同じものを何度も加える・差し引く」ことを表現しているから。そういう意味で、イデアルという考え方は、整数と素数の世界では倍数・約数、商と余りの意味合いが出てくる
4 有理整数環
- 高校数学からベクトル空間を考えるとき、そのスタート地点として実数という体がわかりやすかったが、数の概念として、制約が大きい整数に戻った上で加群~ベクトル空間、商空間というものを考えていく
- 数論のための抽象代数の基礎になっている
6 加群理論の応用
- 応用例でさらに理解を深める