ぱらぱらめくる『クラスター代数入門』

クラスター代数入門

1 はじめに

  • クラスター代数には、以下の3項目とのつながりがあり
  • 数理物理学に出てくる可積分系は「組み合わせ論・ルート系・リー環量子群」ともつながりつつ、「三角形分割・双曲幾何・結び目」ともつながるという相互関係がある
  • クラスター代数の数字の動きを知る初歩的な例としてConway-Coxeter friezeと呼ばれる、数を並べるゲームが挙げられている
    • 数の計算ルールとして4個の数a,b,c,dを四角形に並べた時に、bc = ad + 1の規則を守らせる
    • 上下を1の列でサンドイッチし、その間に4数の四角形がダイヤモンド型に斜めに置かれる配置し、左端も1にする
    • このようにすると、上下サンドイッチの間に何層あっても、サンドイッチ部分には
      • 対称的な数値の並びが現れる
      • しかも、c = \frac{ad+1}{b}という分数計算をしているのにも関わらず、整数ばかりが現れる
  • こんな、一見、分数~有理数が出てきそうなゲームなのに、整数ばかりが現れ、しかも、対称的で、元に戻る、というのが、団代数のある側面を表していることから、好例として示されている
  • ここでbc = ad + 1という関係式を少し、一般化する
    • bc + ad  +1のルールでは、ちょっと書き方を変えると、x_{2k+1} = \frac{x_{2k}+1}{x_{2k-1}}, x_{2k+2} = \frac{x_{2k+1}+1}{x_{2k}}と言う計算になることが示せる
    • これをx_{2k+1} = \frac{x_{2k}^{d1}+1}{x_{2k-1}}, x_{2k+2} = \frac{x_{2k+1}^{d2}+1}{x_{2k}}としてやる
    • (d1,d2) = (1,1)の場合からの一般化になっている
  • このようにすると、「元に戻る~閉じる」という性質が(d1,d2) = (1,1),(1,2),(1,3)の場合に限られることを示すことができると言う
  • その他の有名な例
    • 多角形の対角線の引き方に見られる団代数の例

2 クラスター代数

  • (係数なし)クラスター代数
    • 箙による団代数の例
  • クラスター代数について知られているTheorem 2.2
    • すべてのクラスター変数は、ローラン多項式の形になっている
    • 相違なるクラスター変数が有限個(シードが有限個)であることと、対応する箙がADE型quiver (ルート系のタイプにA,B,C,D,E型と言うのがある)にmutation 同値である(mutation 同値とは、まあ、同値と同じようなことと思っておいて大丈夫)
  • ルート系(ランク2)
    • 二次元平面を1種類の三角形でタイル貼りする話とルート系に関係がある
    • しかも、このタイル貼りが成功することと、(d1,d2) =(1,1),(1,2),(1,3)の3通りだけが、発散しないという話に対応がとれる
    • うまくいく三角形タイル貼りでは、いくつかの種類の等間隔平行線が現れる
    • 等間隔平行線というのは、その平行線の法線ベクトル\alphaを使って\{v \in R^2 | (v,\alpha) = k; k = 0, \pm 1, \pm 2...\}のように書ける
    • ここで、タイル貼りパターンごとに、何通りの平行線が現れるかが決まっているが、そのそれぞれの平行線の法線ベクトルは線形非独立で、限られた数の法線ベクトルの整数係数線形和で他の法線ベクトルを表すことができる
    • そして、その法線ベクトルの集合がルート系
    • ルート系を生成することができる「素」となるベクトル(である生成係数制約を満たすもの)がsimple roots
    • そのルート系が一部の法線ベクトルによって生成され、その生成の整数係数線形和のパターンと、対応する三角形タイル貼りに伴うクラスター代数のローラン多項式の分母とが一致する
    • これが(有限な)クラスター代数とルート系の関係
    • ルート系の次元を上げる
      • 三角形でのタイル貼りは2次元版
      • 三角形を単体に、平行線を平行超平面にすると、一般次元版
  • 一般のルート系
    • ベクトル空間Vの部分集合\Psiがルート系で、\Psiは以下の条件を満足する
      • \Psiは零ベクトルを含まない有限集合で、Vを生成する
      • \alpha \in \Psiに対して、V上の線形変換s_\alphaを、s_\alpha : V \to V, v \to v - 2\frac{(v,\alpha)}{(\alpha, \alpha)} \alphaとするとs_\alpha (\Psi) = \Psiが成り立つ
          • この線形変換s_\alpha\alphaを法線ベクトルとする超平面に関する鏡映写像
      • \forall \alpha, \beta \in \Psi, 2 \frac{(\beta, \alpha)}{(\alpha, \alpha)} \in Z
      • \alpha \in \Psiのとき、 \pm \alpha \in \Psiだが、それ以外の\alphaの定数倍ベクトルは\Psiに含まれない
    • ごちゃごちゃかいてあるけれど、「単位的なベクトル」の集合で、正逆向きの2本のベクトルは含まれ、内角が180度でないベクトル同士の関係は、内積を通じて整数制約がかかっている。また、各ベクトルを法線とする超平面による鏡映ベクトルも含まれるような対称性の担保がされた、ベクトルセットがルート系
    • この制約では、2\frac{(\beta,\alpha)}{(\alpha,\alpha)} = C_{\alpha,\beta}の値が整数になるわけだが、それは0,1,2,3になり2つのベクトルのなす角は\frac{\pi}{k}; k = 2,3,4,6に限られる。また、\alpha,\betaというベクトルの長さの比の関係にも制約があって、1,\sqrt{2},\sqrt{3}のみになるなどの関係がある(ただし、内角が直角の場合の長さ制約はない)
  • また「単位的なベクトルの集合」はsimple rootsだが、それ以外のルートはsimple rootsの線形和で表され、その係数はすべて0以上か、すべて0以下かの2通りに分かれる。したがって、ルート系は、simple rootsを持ち、すべてのルートは、係数0以上のみルート(正ルート)と、係数0以下のみルート(負ルート)のどちらかに分けられる
  • カルタン行列
    • 整数になることが担保されているC_{\alpha,\beta} = 2\frac{(\beta,\alpha)}{(\alpha,\alpha)}  を成分とする行列はカルタン行列と呼ばれる
    • 箙の反対称行列の全成分の符号を負にし、対角成分を2にしたものは箙(とその団代数)の性質を(ある程度)保持するが、この行列が、Dynkin 図でADE型のカルタン行列になっていることは、(多少の付加的説明を加えた上で)この箙のクラスター代数が有限であることの必要十分条件になっている
  • Dynlin 図は、鎖状のグラフだったり、多少の枝分かれをするグラフだったりする。そのグラフのエッジは基本的には一重だが、二重以上のものもある。そして一重の場合がADE型と呼ばれる
  • カルタン行列からDynkin図を作るルールは以下の通り
    • nxnカルタン行列に対応するDynkin図の頂点数はn個
    • |C_{ij}| \ge |C_{ji}|のとき、頂点 i,jを|C_{ij}|本の辺で結ぶ
    • |\alpha_i| < |\alpha_j|のときjからiへの向きとする。ただし|\alpha|はベクトルのノルム
  • 係数付きクラスター代数
    • 係数なしクラスター代数は、シードが交代(可能)行列と変数セットからなり、その変数が変異によりローラン多項式の形を取るというものだった
    • 係数つきクラスター代数では、シードが交代(可能)行列と、変数セットと係数セットからなり、係数の変異は係数のみにて完結する(が(トロピカル)半体を用いた関係式になるという、ちょっとしたごちゃごちゃ感がある)、変数セットの変異は、変数と係数とを両方使った関係式によって定義される

3 差分方程式への応用

4 双曲幾何への応用