幾何って何? Noncommutative Geometry

Chapter 1 Noncommutative Spaces and Measure Theory

1. Heisenberg and the Noncommutative Algebra of Physical Quantities
  • 元素の周期表は、原子核の陽子数を一つずつ増やしていくと新しい元素ができるが、その周りにある電子の存在状態は、特定の「場所」にハマると考え、また、特定の場所の数は、異なっていることなどを仮定することで、原子の外側にある電子の場所の埋め方と化学的特徴との類似を表形式にしたもの。じゃあ、なんでそんな特定の場所があったり、内側とか外側があるか、と言うのを説明するのが原子物理学・量子物理学で、シュレーディンガー方程式とかパウリの排他律とかそんな説明モデルがうまいこと当てはまる
  • このうまいこと当てはまる物理のモデルを支えているのが非可換代数
  • 逆に言うと、こんな原子レベルの物理学の「配置の仕方〜幾何」と仲良しなのが非可換代数であり、そのような非可換代数が使える「配置の仕方〜幾何」が非可換幾何だ、と、このPDFの節では言いたいらしい
  • "Heisenberg: physical quantities are governed by noncommutative algebra"
  • 実際、実験によって、電子の存在状態・エネルギー状態などを調べ、観測を説明できるような計算・代数を考えていくと、行列の積が出てくる(これが非可換)。また、群(group)ではなくてgroupoidと言う代数構造を使うとよくなる、と言うことになってくる(らしい)。エネルギーを運動エネルギーとポテンシャルの和として表し、エネルギーを物理量としたときにこの物理量を演算子とするのが量子力学。「値」として扱えるかと思っていた物理量が「行列」で表せること、行列では積が非可換なこと、この辺りが量子力学と「非可換代数」とのつながり
  • まだ、この非可換代数が、何のどう言う物を「幾何」として扱うのかがよくわからない…
  • "In fact, the results of the theory of ∗-products (これが非可換積) show that a symplectic structure on a

manifold (これが幾何対象、多様体) such as the phase space (これが多様体が表している物理対象) is none other than the indication of the existence
of a deformation with one parameter ( h here) of the algebra of functions into a noncommutative algebra"と言う表現が、どうも、幾何の説明になっているようだ

  • わかる範囲で意訳すると、非可換積の理論があるが、それはシンプレクティック構造を持つ多様体を状態空間とした理論になっていて、その状態空間には、h(多分ハミルトニアン。上で運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和としたもの)がとその変化とか移動とかが表されている。そしてこのシンプレクティック幾何な状態空間の作用(物理量)は非可換
  • このシンプレクティック幾何がさっぱりわからないかWiki記事を引用すれば"Symplectic geometry is a branch of differential geometry and differential topology that studies symplectic manifolds; that is, differentiable manifolds equipped with a closed, nondegenerate 2-form. "とのことで

"A symplectic geometry is defined on a smooth even-dimensional space that is a differentiable manifold. On this space is defined a geometric object, the symplectic form, that allows for the measurement of sizes of two-dimensional objects in the space. The symplectic form in symplectic geometry plays a role analogous to that of the metric tensor in Riemannian geometry. Where the metric tensor measures lengths and angles, the symplectic form measures oriented areas."ともある

  • 要するに、「微分を使ってつながり具合を研究するから、幾何」であり、「隣同士について考えるから、トポロジー」であるので、シンプレクティック幾何は、幾何に含まれる。その「微分を使って扱う対象である多様体には、微分を許す何かが乗っているのが良いkが、それが"closed nondegenerate 2-form"だと言う。これとは別の何かが乗っている多様体はシンプレクティック多様体ではなく、その一つはリーマン多様体なのだろう。少し言葉を変えてかくと、滑らかで、偶数次元な空間にその幾何は定義できると言う。この辺りも奇数次元を許すタイプの幾何とは違う。そして、空間が定義されると、そこには幾何的対象(サブスペースだったり、そこに広がるものだったりが現れてくるが、それを代数で表せば、シンプレクティック幾何における代数幾何になったりするのだろう)が定義できて、それがシンプレクティック多様体多様体が複数できたら、比較したくなるのが心情。比較するには、「測る」必要があり、「測る道具」も必要。リーマン幾何での測る道具はリーマン測度テンソル。シンプレクティック幾何では、シンプレクティックフォーム。リーマンの測度テンソルが測るのは長さと角度。シンプレクティック幾何が測るのは、向きつけられた面積
  • と言う訳で、「幾何」は、広がりのある空間を対象にし、空間に多様体を置く。広がりを扱うには、つながり具合を見たいから、位相を考えたり、微分したりする。そのようなつながり具合の表現を持つ対象である多様体を比較するのも幾何の仕事で、比較のための道具立ても必要。それが、測度テンソルを持つ幾何もあれば、●●フォームを持つ幾何もある。そして比較するには定量したり異同を決めたりする仕組みが必要で、定量・異同の対象には、長さや角度や面積があるが、どれを使うか(どれが使えるか)は場合による
2. Statistical State of a Macroscopic System and Quantum Statistical Mechanics
  • 統計力学では多数の要素が作る超多次元の状態空間を考えるが、実際には、その期待値が巨視的な物理量として観測される。物理量の期待値は、想定している状態空間に置かれた確率測度の状態空間全体の積分になる。非可換幾何がここで登場するのは、この物理量の期待値を考えるべき空間が先のシンプレクティック幾何空間のように非可換代数のルールを持っていることに対応する
3. Modular Theory and the Classification of Factors
  • von Neumann環は大事らしい。だが、どのように大事なのかがわからない。WIki記事によれば『フォン・ノイマン環(ふぉんのいまんかん、von Neumann algebra)とは、ヒルベルト空間上の有界線型作用素たちのなす C*-環のうちで恒等作用素を含み作用素の弱収束位相について閉じているもののことである。一般の C*-環と並ぶ作用素環論の主要な研究対象であり, In mathematics, a von Neumann algebra or W*-algebra is a *-algebra of bounded operators on a Hilbert space that is closed in the weak operator topology and contains the identity operator. It is a special type of C*-algebra.』とある
  • 可換版と非可換版があるらしい
  • von Neumann環を語るためのタイトルが「Modular Theory and the Classification of Factors」である理由がわかると、この章の意味がわかるのかもしれない
  • 幾何対象、その代数(特に可換・非可換)との関係を理解するための諸要素が詰まっている、とか、その諸要素の出自を理解するのに有用な対象であるとか、その意味での歴史的位置付けとか、そう言うことを述べたい章なのかもしれない
4. Geometric Examples of von Neumann Algebras : Measure Theory of Noncommutative Spaces
  • von Neuman環の大事さがわからないなりにこの章に入ったとして、そのvon Neuman環に幾何対象が対応づけられる
  • noncommutative geometryの導入のためにvon Neuman環を用いたと言うことか…
  • "the theory of von Neumann algebras replaces ordinary measure theory when one has to deal with noncommutative spaces"とあるように、von Neumann代数を介して、普通の測度で考える空間から、非可換空間へと概念を拡張するのがこの章の目的らしい
  • その拡張作業に当たっての注意事項は次のように書いてある。"they appear singular when considered from the classical point of view, i.e. when investigated using measurable real-valued functions."いわゆる実数値関数で測ることに拘泥すると、それ、おかしいでしょう!とこんがらがるよ、と
  • まず、関数を考えよう、と。関数も空間の点にする。ヒルベルト空間。ベクトル空間みたいな感じ。ある関数をある関数に「変換」したいかもしれない。それはヒルベルト空間での変換。関数を関数の多項式で表したり、線形代数的に変換したり、そう言うことをする。そうすると、ある関数で表されていた「絵」を表すのに、別の関数を用いることになるけど、そのときに、絵の描き変え・変形にうまく対応する関数の変換って言うのもある。その変換に可換代数で対応することもある。そんなのが、von Neumann代数であってそれが取り扱い可能な関数の集合?になっている
  • もしかすると全然違うかもしれないけれど、この関数変換にあたって、プラス側もマイナス側も長ささえ同じなら、対称、と言うような変換になっている場合が可換代数、可換版のvon Neumann代数、ってこと???
  • じゃあ、そんな風に変換できる関数たちがあるなら、そんな風には変換できない関数って言うのもあったりしないか、と言う話になって、実際あるよ、と。それが、別のタイプのvon Neumann代数らしい。相変わらず、(関数のための)ヒルベルト空間を相手にするらしい。その辺りでFolication(葉層)とか出てくる。いかにも、空間の切り分け方が「普通じゃない感じ」。この普通じゃない感じを説明するために非可換が出てくる(らしい)
  • 多様体を考えるときに多様体上の点のタンジェントスペースを考えて、それが滑らかに繋がっていくことを扱ったりするが、そのタンジェントスペースの全体を取り出さず、(タンジェントスペースが二次元なら、1次元部分だけのように)部分を取り出してしまうと、「普通の多様体」の「普通のタンジェントスペース」の道具が使えなくなる。だからと言って、元の多様体が壊れてしまうわけではないから、タンジェントスペースの取り出し方に「普通じゃないルール」を入れて、その結果として出てきた多様体を考えることは、別に「ルール違反」ではない。そんなやり方の一つがFoliation
  • Foliationsのやり方の絵がいくつか出ているが、色々ある。そのそれぞれについて、measuringのことを議論すると、あーなったりこーなったりする。その違いがcommutative von Neumann代数だったり、noncommutative non Neumannnだったりすると言うことらしい…
  • 嘘かもしれないが、このFoliationsの具合って言うのは、原子の電子軌道殻とかに対応しているのかなー…

Chapter 2 Topology and K-Theory

  • 幾何を考えるときに、集合があって、要素の並び具合・つながりぐあい・包含関係を問題にすればそれはトポロジー
  • この章では、通常の集合としてのふるまいがおかしげな対象を取り上げ、それに関する「集合を対象にした意味でのつながり・包含関係」について取り扱うことを通じて、トポロジーの概念を拡張する
  • その拡張した意味でのトポロジーを使うための道具がK-theoryらしい
  • どんな対象を集合的におかしげなものとしてとりあげるか、というと
    • 平面のペンローズタイリングが作る空間X
    • 離散群\Gammaの双対空間\hat{\Gamma}
    • 多様退場の群作用の軌道空間
    • 葉層の葉空間
    • リー群Gの双対空間[ted:\hat{G}]
  • 空間があって、その上に定義された連続関数があるけれど、空間が普通ではないがために、その対合にあたる代数を構成すると非可換になってしまうらしく、そのような非可換代数をC*-代数として定義しているということらしい
  • そのような関係にあるので、空間(集合)がまともなら、おなじやり方で定まってくるC*-代数は可換なものとなる
ペンローズタイリング
  • この記事の図を見よう
  • 2種類のひし形を中心から隙間ができないように螺旋的に回しながら貼り付けて、平面の埋め尽くしをしている
  • これが可能なのは、ペンローズタイリングの2つのひし形ピースの辺の長さと角とが都合よくできているからでもあり、また、いくつかのピースを組み合わせると、より大きな相似ひし形が作れるといううまい具合のピースになっているから
  • ペンローズタイリングが「非可換幾何」の例として取り上げられるのは、この2つのピースの並べる順番を決める0,1の数列が作る空間が、変わった空間だから
  • どう変わっているか、というと、完全になんでもよい、というわけではないが、相当程度の自由度があること
  • 細部は違うが、大局的にはほとんど同じであること
  • 小さなピースのペアから大きなピースのペアを作る演算が行列演算であること
  • それやこれやで、普通のことが通じないけれど、きれいにできていて、しかも「非可換」
  • これが解ったところで、「非可換幾何」ってなに?という自分の問いに対する、本当にごく基本的な答えは得られた
  • 対称図形なら、簡単なルールで図形表現・図形集合の表現ができる。それは可換幾何に(おそらく)相当し、それではどうしようもないけれど、ルールがないわけではないような幾何構造があって、それを非可換ルールで説明することができるよ、それが非可換幾何だよ、そのつもりで考えるとペンローズタイリングは、見て楽しい非可換幾何模様だけれど、色々あって、『見る対象としての幾何』だけでなく、より広い意味での空間の論理に非可換があるよ、とそういう話らしい