楕円曲線 ぱらぱらめくる『私説 超幾何関数』

  • 2. 楕円曲線
    • 楕円曲線の理論は美しいという。いくつかの登山口があるという
      • (1)楕円の周囲を求めるという動機から、三角関数では無理である、それを押し広げることとして到達する〜ガウス
      • (2)1次元複素多様体リーマン面〜の理論からその不変量について知り、不変量である種数1のコンパクトリーマン面楕円曲線であるとする
      • (3)楕円曲線を射影直線上の相違なる4点で分岐する二重被覆として定義
      • (4)非特異3次平面曲線として定義(幾何的定義)
      • (5)1次元複素線形空間の格子群による商多様体(商群)として定義する。この登山口だと楕円曲線が可換群構造を持つことがすぐわかる
    • 何をするか
      • 楕円曲線を二つの複素数とその比とで定まる、複素格子による商空間として定義する。
      • そのうえで射影埋め込みをして3次平面曲線を得る。
      • この3次平面曲線には4つの分岐点があり、分岐点以外では射影直線が2本ずつある。
      • この複素格子による商空間と1次射影空間上の4点の同値関係とが対応する。
      • 1次射影空間上の4点の同値関係は複比が不変量であったが、その不変量を楕円曲線の係数と関係づけることができることを示す
    • やってみる(ただのごちゃごちゃメモ)
    • 1次元複素平面に加法を定義して(複素数の加法群)、その群に関して、二つの複素数w1,w2によって格子というものを定める。この格子とは、w1の整数倍とw2の整数倍の和で表される点の集合のことである。今、複素数に加法が定義されているから、この格子点に相当する複素ベクトルを足すことで移りあえるかどうかで類別してできる商空間がある
    • これを楕円曲線と言う、と、定義。
    • 結局、この2複素ベクトルが作る平行四辺形「実現」
    • この楕円曲線が2つの円周の直積と同相である、と…:「商空間が曲線である」、こはいかに!…二つの複素数が二つの周期を表し、その「二重周期性」が「楕円曲線の『本質』」と結びつく模様…
      • 2次元格子が、ひとつの四角形を商空間としている様子は、格子の1方向について、ぐるぐる周回している本質を回さずに延ばしておき、もう1つの方向でもそのようにしていることと同じだから、2つの円周の直積と同相だ、と言っている。そう言われればそう見えてくる。
      • 言い換えると、楕円曲線は、『複素数を周期とする2つの円周の直積』のことであるから、その群とその商空間で表現すれば、複素数を加法群とみなしたときの、二つの複素数が作る格子部分群の商空間と言える、という話。それを、格子部分群の方から話を始めて、2つの円周の直積に結びつける、という順序を踏んだ、という形になっている
    • 楕円曲線は2つの複素数で決まることがわかったが、2つの複素数を等倍(等複素数倍)しても「自己同型〜楕円曲線的には同じ」である。それは複素数の加法群について考えているから。また、格子部分群の取り方によって決まるのだから、格子として同じものを作る複素数ペアは同じ楕円曲線に対応する。そのことを群とか射影とかで言うと、「(2次元)格子は格子点という整数倍を扱うので、2つの複素数ペアが同じ複素点を格子点とするには、複素数ペアの移りあいを取り持つ行列には制限がある。そのような行列を考える。また、複素数の等複素数倍について楕円曲線的には同じ、とするということは、「2つの複素数の比」が同じなら良いと言うことなので、この複素数平面格子の移りあいを取り持つ行列を線形群の部分群としたときに、それの射影化したものによって考えれば良くなる。したがって、2次元の格子の移りあいを満足する線形変換の群の射影化したものによる商空間ですよ、しかも、2つの複素数には順序を導入しても、直積の入れ替えをするだけだから、問題はなくて、一般性を失わないから、射影空間の半分を考えればいいですよ、となる。
    • 楕円曲線がなんだかわからないと抽象的な議論についていけないので、あえて書いておくと、『滑らかで(非特異で)種数が1の代数曲線(1回切るとちょん切れる曲線のこと?)。代数的に定義された積が乗っている』
    • なんのことだかまださっぱり分からないが・・・複素数の加法群に2つの複素数を使って商空間を定めると、それは抽象的でわかりにくいのだが、そのわかりにくい商空間をわかりやすくするのが「実現」でしょ、という本書の導入に沿って、こんな風に実現してやるのです、という展開のようだ。たとえばワイエルシュトラウスのペー関数、射影平面内への埋め込み、平面3次曲線、直線の二重被覆、ラムダ関数、テタ関数…
    • ワイエルシュトラウスのペー関数
      • 周期関数を考えるとき、同値関係にある複素数が同じ値を持つように関数を定義するには、「無限に広がるすべての格子点と、任意の点との関数」の級数表示であるはず、というところから出発する。その上で、2つの複素数の作る平行四辺形の内部には「極値」があってはいけないことが示されているので、その条件を持つように選びましょう…と考えて、出てくるのが
      • \mathcal{p}(z) = \frac{1}{z^2} + \sum_{w \in L -\{0\}} (\frac{1}{(z-w)^2} - \frac{1}{w^2})、ただし、Lはすべての格子点であって、原点だけ特別扱い(\frac{1}{0^2}がうまく行かないから)。また、このようなうまく行かない\frac{1}{w^2}を持ち出すのは、「本当は、1/(z-w)^3という関数がよい面もあるが、完璧ではないので、ちょっと工夫をして、\sumの中を通分すると、分子がw^1、分母がw^4なので、wの-3乗の特徴を持たせられるから
      • ただし、この無限の格子点に関する級数展開は、実際の計算上は面倒くさいので、計算的には工夫が必要。その話はこちら
      • ペー関数には、その微分との間に\mathcal{p}'^2 = 4 \mathcal{p}^3 - g2 \mathcal{p} -g3なる関係(ここでg2,g3はwによって決まる値(ただし無限格子点の級数))なる関係があって、このことは、ペー関数がある非線形微分方程式を満足していることも意味する。また、楕円積分というものの一種であることも、この式からわかる。
    • ペー関数とその微分を使って「実現」してみる
      • 複素数に対して、ペー関数は複素数の値を与える。ペー関数の微分複素数の値を与える。ペー関数もその微分も、格子に関して二重周期性を持つ楕円関数である。このペー関数の値とペー関数の微分の値との組はこのままだと、無限大などがあって扱いにくいが、複素数zに対して\mathcal{p}(z):\mathcal{p}'(z):1=\mathcal{p}(z)\times z^3:\mathcal{p}'(z)\times z^3:z^3を考え、これの写像を考えると、無限大もうまくおさまって、複素射影平面の上に『楕円関数として定められた商空間』が実現される。複素射影平面への埋め込みとも言い、複素射影平面内の平面曲線として実現したとも言う。
      • p(z):p'(z)=1=q^3p(z):q^3p'(z):q^3=z1:z2:z3とすると、\mathcal{p}'^2 = 4 \mathcal{p}^3 - g2 \mathcal{p} -g3z2^2z3=4z1^3-g2z1z3^2-g3z3^3となる。これはw1=z1/z3,w2=z2/z3を使えばw2^2=4w1^3-g2w1-g3のこと。
      • このw2^2=4w1^3-g2w1-g3w2=0のところ以外ではf(w1)^2 = w2^2のように2つの曲線(射影直線)に対応するので、曲線全体は、4w1^3-g2w1-g3=0の根でで分岐しあう「2重被覆」という形態をとる
      • この「根」に相当する分岐点が(無限遠も含めて)4つあり、その4点の相互関係が複比を定める。
      • 複比が定まるということは、「複比が点順序について不平等」だったことを思い出せば、「点順序平等」な不変量も作れるだろう、ということになる。それがJ-不変量。J=\frac{g2^3}{g2^3-27g3^2}。これを3次曲線のJ-不変量と言う
    • テタ関数の導入の前に
      • 曲線の交点を通る直線、曲面の交曲線を通る曲面を求めるにあたり、曲線・曲面の関数に1変数付け加えて、対象を射影空間上のそれとみなすことにより、交点を通る直線、交曲線を通る曲面を求める作業を1変数多い状況での行列式の取り扱いに切り替える。また、射影すると同じものになるかどうか(商空間で考える)によって、作業を一般的に取り扱うことを確認し、代数曲線・射影完備化についての雰囲気を知っておく
    • テタ関数
      • どこでも何回でも微分可能な関数、正則関数で楕円曲線を表したい(指数関数を使って表すことにする)
      • ペー関数は、格子点で発散する関数を使っていたので正則関数で実現していたわけではなく、有理型関数で実現していた。この「発散する有理型関数」を使いつつ、発散していない楕円曲線を表すために無限級数表示になっていた
      • テータ関数を使うバージョンも無限級数表示だが、個々の項が無限大発散しないので収束しやすく、計算上有利
      • テタ関数は複素格子Lの商空間に対応する二重周期関数
      • 原点の平行移動によって4種類(格子の2方向に関する2x2)ある
      • 4種類のテタ関数を使うと、不変量の表記がきれいになる