ぱらぱらめくる『Cluster Algebras and Triangulated Surfaces Part I : Cluser Complexes』

  • Teichmuller spaceのことを知るにあたり、三角形メッシュとその団代数の基礎を確認したい
  • Part I , Part II と言う構成になっている、以下の2つのPDFをぱらぱらめくることにする
  • まずはPart I から。Part II は次の日の記事で
  • 曲面の特徴付け(S,M) with n = 6g + 3b + 3p + c - 6
    • 曲面をSとする
    • S上に点集合Mを持たせる。それがないと、arc(辺)が引けず、arc(辺)が引けないと、三角化ができない。(S,M)が対象になる。Mは"marked points"のmである
    • Sが閉曲面であるなら、いわゆる「穴」がいくつあるか(球面の穴の数は0、ドーナツのそれは1) : g
    • Sに破れがある時、それは曲面に開いた「面積・周囲長 > 0」の「空隙〜破れ穴」とする。その「破れ穴」は、曲面にとっての端閉曲線。これをborderと呼び、その数を b とする。gで表される「穴」とbで表される「破れ穴〜辺縁曲線」との混同に注意する
    • Mの要素である点の存在位置は、2通りに別れる。Sのborders上か、それ以外(いわゆるSの内部)か、である
    • Borders上の点の数をc、いわゆるSの内部の点の数をpとする。|M| = c + p である。pはpuncture(針刺し穴)からきている。cは(circumference(円周))からきている?
    • 三角メッシュにはarc(辺)があり、その数をnとする
    • n = 6g + 3b + 3p + c - 6と言う関係がある
    • なお、Teichmuller spaceの方では、次のような関係式がある。d=6g + 3b + 2p + c + \sigma -6。ここで、dはTeichmuller spaceの次元((S,M)の色々を納めた空間の次元)、\sigmaは"the dimension of the space of biholomorphisms X -> X isotopic to the identity rel f(P) any [(X,f)] in T(S,M)"とされるもので、これがわかろうと思って、この文書をぱらぱらめくっている
    • いずれにしろ、\sigmaが0であるような場合に、ガウス曲率がそこら中で-1になって座標の議論がしやすいらしい
    • puncture 点の数の扱いが3p,2pと違う、辺の数nが出てこない・出てくる、\sigmaが出てこない・出てくる、と言う違いになっている
    • したがって、Teichmuller spaceの次元dと言うのは、三角メッシュの辺の数からpuncture点の数を引いたものに、おおよそ一致するが、それを調整するパラメタとして\sigmaがあるらしい、と言うことがわかる
    • 簡単な例を見ておく
      • 四角形で針穴(puncture)がない場合。面自体にはgenus穴はなく、球面に破れ穴を一つ作り、そのborderに4点をとっているから、g = 0, b = 1, p = 0, c = 4. n = 6g + 3b + 3p + c - 6 = 0 + 3 + 0 + 4 - 6 = 1
      • Annulus with one marked point on each boundary component. これは、平面シート(折り紙)から円板を作り、中央に丸い破れ穴を作ったもの。g = 0, b = 2, p = 0, c = 1 + 1 = 2. n = 6g + 3b + 3p + c - 6 = 0 + 6 + 0 + 2 - 6 = 2
      • トーラスに1個のpuncture。g = 1, b = 0, p = 1, c= 0. n= 6g + 3b + 3p + c - 6 = 6 + 0 + 3 + 0 - 6 = 3
  • Ground set of arcs A^{\circ}(S,M)
    • (S,M)に、どんなarcが引けるか、そのarcの全体の集合をA^{\circ}(S,M)と表す
    • arcは、単にどの点とどの点の間に引くか、だけではなく、他のarcたちとの相対的位置関係を考慮した上で決まるものであることに注意する
  • Arc complex \Delta^{\circ}(S,M)
    • A^{\circ}(S,M)はたくさんの要素を持つが、それをうまく選ぶと、三角化(ideal triangulation)ができる。三角化できているので、その三角形と、それに帰属する3辺、各辺が接続する頂点の全体は、単体的複体になっているし、さらに、三頂点からなるクリークの集まりになっている。そのような、A^{\circ}(S,M)の要素の亜集合がクリークになるようなグラフを作ることができる。そのグラフでは、各頂点はA^{\circ}(S,M)の要素であり、各クリークは三角化である。このグラフが表す組み合わせ構造のことを、arc complexと呼び、\Delta^{\circ}(S,M)と現す
    • arc complexのあるクリーク(ある三角化)から、隣接する別のクリークに映ることができるが、これは、三角化のflip (な変化)になる。これは、2つの隣接する三角形が共有する辺を取り去って、その2個の三角形が作る四角形のもう片方の対角線を辺とする三角化に移ることに相当する
    • arc complexはpseudo-manifoldになっている
    • このpseudo-manifold \Delta^{\circ}(S,M) には外縁がある。そこでは、移り合えるarcペア、移り合える三角化ペアに制限がある、と言うことを意味する。それは、外縁にある点に相当するarcが、ループ辺であって、かつ、そのループの内部にpunctureを1つ内包している場合に相当するそうだ。しかもそのループになっているarcは arc enclosedを持たない、と言う条件を満たすらしい (arc enclosedをcontainしない、と言う意味がよくわからないのだが)
  • Ideal triangulationsを頂点とし、その移行関係を現す複合体 E^{\circ}(S,M)
    • \Delta^{\circ}(S,M)の双対グラフ
    • E^{\circ}(S,M)の基本群は、長さ4のサイクルと長さ5のサイクルからできるのだと言う
    • 長さ4のサイクルは可換な関係にある2つのフリップを交互に繰り返して元に戻ることに相当
    • 長さ5のサイクルは、5角形を三角化するのに必要な2つのarcsを順繰りにフリップすることに相当
  • B(T) : 三角化(T)にsigned adjacency matrix (skew symmetric matrix)を対応づける
    • グラフの辺接続行列に相当。辺に適当に番号を振り、行番・列番とする。(S,M)は向きつけられた面だから、三角形には、時計回り・反時計回りが決められる。どちらか片方を採用して、その回り順で接続していれば1、その逆なら-1にしたものが辺接続行列
    • 全ての三角形について、この接続関係の値を取り出して、総和をとったものをB(T)と定義する
    • ただし、これだけだと、B(T)の要素は0,±1しか出てこないが、±2が入ることもある
      • 具体例としては、Annulusで、それぞれのボーダーに点が1個ある場合を考える。外側ボーダーの点から、内側のボーダーの点へは、2本のarcが引ける。1本は中央の破れ穴の右側、もう1本は左側。こうすると2本のarcが分けた2領域について、arc1 -> arc2 の向きは、ともに時計回り(か、ともに反時計回り)となるので、2つ(しかない)三角形について、接続の情報の総和をとると、2や-2が現れる
    • 変異で移り合えるB(T)の集まりを、mutation equivalence class of a matrix B(T)と呼び、これは、(S,M)の三角化に付随する構造になっている
  • 団代数
    • B(T)がskew symmetric matrixになるので、団代数を三角化Tに考えることができる
  • Exchange graph、Cluster complex
    • B(T)に変異が定義できる。変異は、行列B(T)の各行・各列の番号付けに対応したarcごとに定義されているから、B(T)から、三角化arc数だけ変異による移行がある。したがって、その三角化arc数nに対して、n-正則グラフが作れる。これを、Exchange graphと呼ぶ
    • Exchange graphの各頂点は行列B(T)に対応するが、行列B(T)はideal 三角化に対応しており、隣り合う三角化はarcによって隣り合い関係が決まっている
    • この関係は、arc complex \Delta^{\circ}(S,M)とその双対E^{\circ}(S,M)との関係を思い出せば、Exchange graphの双対に意味があるだろうことは容易に想像がついて、それがcluster complex
  • 団代数と、三角化の\Delta^{\circ}(S,M),E^{\circ}(S,M)の関係
    • \Delta^{\circ}(S,M)はnxn skew symmetric matrixが構成するcluster complex Aのsubcomplexになっている
    • D^{\circ}(S,M)はAのexchange graphのサブグラフになっている
  • Tagged arcs
    • 三角化で考えたarc complexと三角化の以降関係complexとは団代数の行列seed変異とかなり近いが、一致せず、三角化の方が「部分集合」「部分グラフ」になっている
    • 対応関係をきちんとするためには、三角化で扱うarcと言う概念を拡張して

tagged arcと言うものに格上げする必要がある。そんな話

    • いわゆるarcをtagged arcに格上げする対応ルールがる。1本のいわゆるarcが1本のtagged arcに対応することもあるが、複数のtagged arcsに対応することもある
    • Plain arcsの集合はA^{\circ}(S,M)で、それをA^{\bowtie}(S,N)に対応させる写像\tauと言うものも使うらしい
    • ローラン多項式とかその辺りの計算?や不変量計算に有用な定義:こちらを参照、こちら
    • Tagged arcs の集合を使うらしい。A^{\bowtie}(S,N)と書く
    • arcにタイプ分けをするらしい
    • boundary上の点に落ち着くものを is tagged plainと言う。そうでないのはnotched tagすると言うらしい。once-punctured monogonをcut outしないarcに付与されるタイプ分けらしい
    • boundaryの点から出てboundaryの点に入るarcは、両端点が異なればplain。そうでなければ、ループだが、ループの内側に1個も点が入らないことはない(らしい)ので、 once-punctured monogonをcut outするarcと言うことになるらしい
    • boundaryの点とpunctureの点を結ぶarcは2本のtagged arcsにする。1つがplainで、もう片方はnotched
    • 普通のarcは片方の頂点でplainなarcとし、もう片方の頂点でnotchなarcと、2つのtagged arcsに対応させる
      • なので、boundaryとpunctureをつなぐarcは2種類のtagged arcsに対応する
      • 同様に、punctures同士をつなぐarcは4つのtagged arcsに対応する
    • arcは次のような分類になる
      • Boundary to boundary (not a loop)
      • Loop at boundary
      • Loop at puncture
      • Boundary to puncture
      • puncture to puncture (not a loop)
    • 2つのarcsの関係の分類
      • 2つのarcsは必ずしも1つの三角化に含まれるとは限らないから、交叉しうる
      • したがって、次のように分類される
      • αとβの端点は4つあり全て異なる。2 arcsは交叉しない
      • αとβは同じboundary点に接続するが、もう片方の端点は異なり、2 arcsはS内で交叉しない
      • αとβは同じpuncture点に接続し、もう片方の端点は別。同じpuncture点へのtagging タイプは同じで、S内で交叉しない
      • αとβはループではなく、両端点を同じくするしtaggingタイプも同じだが、S内で交叉しない
      • αとβはともにループで異なるループ。始点・終点は同じ。taggingタイプは全部同じ。S内で交叉しない
      • αとβはループではなく、taggingを無視すると同じarcになる。taggingタイプは片方の端点では同じで、もう片方では違う
      • αとβは同じ(coincide)
  • Tagged arcのcomplex
    • \Delta^{\circ}(S,M),A^{\circ}(S,M)のcomplexがあったように\Delta^{\bowtie}(S,M),A^{\bowtie}(S,M)がある
    • (乱暴に言うと、)borderからのループで、内側にpunctureを1個もつようなarcを、border点から、内側のpuncture点へのnotch tagged arcとして描きなおしてしまえる場合もあるようだ
    • \Delta^{\circ}(S,M)\Delta^{\bowtie}(S,M)のsub-complexになるが、\Delta^{\circ}(S,M)の方では、pseudo-manifoldの外縁あたりで、「クリーク」ができないところがあった(ideal triangulationを囲んでいないところがあった)のに対して、\Delta^{\bowtie}(S,M)の方はそこがうまいことできていて、団代数の移行関係がk-正則グラフになるべし、と言う条件に合うように拡張されている
  • 団代数とintersection numbers
    • 団代数では、ある初期変数セットを用いて、全ての団変数がローラン多項式で表されることが知られている
    • ローラン多項式の分母は単項式な訳だが、その単項の各団変数の次数ベクトルに意味がある、と言う話
    • また、単項式では、変数の積だが、ここで、トロピカル代数としてローラン多項式を見ると、分母の単項は変数の整数係数和であり、分子の多項式は、複数の項の1つを採用する(maxをとる、minをとる)と言うことであり、それも組み合わせ論的雰囲気や、凸包的・幾何的意味を付与できる
    • 今、団変数全体Aを考える。あるseed \mathbf{x_0}=\{x_1,x_2,...\}を用いて、任意の要素z \in Az = \frac{P(\mathbf{x_0})}{\prod_{x_i \in \mathbf{x_0}} x_i^{d(x_i | z)}}と表される
    • ただしP(\mathbf{x_0})\mathbf{x_0}多項式d(x_i|z)は整数
    • ここで、seed \mathbf{x_0}を使っても、\mathbf{x_0'}を使っても、x_i \in \mathbf{x_0},x_i \in \mathbf{x_0'}であるなら、d(x_i|z)は同じ、と言う性質があると予想されている
    • 団変数には変異の変換式があるが、この分母の次数にも変換式がある
      • d(x|\bar{z}) = -d(x|z) + max(\sum_{u \in \mathbf{x}} [b_{uz}]_+ d(x|u) , \sum_{u \in \mathbf{x}} [-b_{uz}]_+ d(x|u)。ただし[a]_+ = max(a,0)
      • また、seed \mathbf{x}からzを抜いて、\bar{z}を加えた新しいseedに変異させている
      • この式は、いわゆる団変数変異の定義式の積と和とをトロピカル代数の積と和とに見立てたものになっていることにも注意する
  • Intersection number
    • tagged arcのペア(\alpha,\beta)に定まる値、(\alpha | \beta)(\beta | \alpha)とで異なりうる
    • 以下で定める4つの整数A,B,C,Dの和とする
      • taggedする前のarcは、異なるseedに属しているなどするから、交叉する。その数をAとする
      • taggedする前のarcがループかそうでないかは、交叉した時に、交叉曲線が、ループの中に入るか入って出るか、と言うことが問題になるので、(\alpha | \beta)を考える時に、\alphaの元のarcがループであるかどうかが影響する。ループでなければ、0、ループであれば、\betaの元のarcが何点で交叉するかを数え、その交叉点数-1をBとする
      • 元のarcが同じで、tagの具合が違うだけ、と言う場合と、そもそも元のarcが違う場合とでも変わってくる。それがC。元のarcが同じなら-1、同じでないなら0
      • 最後に、tagged arcのレベルで、(\alpha | \beta)のintersection numberを数えるのに、\betaの端点が\alphaの端点とで合流する数についてDとする。この最後のDはtagged arcに関することなので、(\alpha | \beta)(\beta | \alpha)とで変わってくる
    • Intersection numberは、団変数のローラン多項式表現の分母の次数になると言う。(\alpha | \beta) = d(x[\alpha] | x[\beta])