ぱらぱらめくる『Cluster Algebras and Triangulated Surfaces Part II : Lambda Lengths』
- arxiv.org
- 一生懸命読んでメモしたものを、後掲するが、「超簡易まとめ」を前掲しておく
(S2同相の形解析の文脈に限ると) 単位球面を用意して、ある数の点を配置する
- 点を結んで平面グラフ・三角化メッシュを作ろう。辺は曲線で構わない(arcと呼ぶ)
- 三角化メッシュは辺のフリップで変異させられる
- いわゆる三角形ではない、変な三角形も「三角化」として扱えると数学的に綺麗に完結するのでそう言う工夫をしよう。団代数扱いが美しく一貫性を持ったものにできるから。
- arcに長さを与える。ただし、Teichmullerな世界にする(双曲幾何で話が整うようにする)工夫を入れる。入れ方は2つある
- 一つ目の入れ方は、各点が無限に高い富士山のように尖ってそそり立っていることにする方法
- もう一つの入れ方は、点を穴あき円板にして、円板の周の1点をその点であるとしてた上で、その点に辺(arc)で到達するためには、円板の周囲を無限に周回することにする
- いずれの方法でも、辺(arc) の長さは「普通の意味」で定めると無限長になるが、そこは、数学らしく、うまい手を考えることにする。そのようにして、うまく扱えるようにした長さをlambda lengthと呼ぶことにする
- このlambda lengthは、三角形メッシュの変異の時に登場する6つのarcs(四角形の4辺と2つの対角線)との間に、うまい関係が作れているのがミソ
- 実は、このうまい関係を維持しつつ、2通りのlambda lengthがarcには与えられる。一つは、普通の和・積演算の世界でつじつまの合うもの。もう一つはトロピカル代数(トロピカル積が普通の和で、トロピカル和が最大値(または最小値)を取ること)の演算で辻褄が合うもの
- このarcがもつ2種類のlambda lengthsから、一つの値を取り出して、それをarcに与えましょう。そうすると、それは全部、「正値」な団変数になるのだけれど、この団変数を持っている団代数は、全正値行列の団代数と対応しているよ、と。
- しかも、このlambda lengthには、別の側面もあって、球面上に三角化とは別に、等高線模様を描いた時に、辺(arc)と等高線との交叉パターン別の交叉本数と言う整数と関係すると言う
- ここから、丁寧版
- Chapter 2 団代数
- tagged arcで考えると、各triangulationはクリークに相当し、クリークは構成数n個の変異によって、それぞれがクリークに移り、しかも、それが至る所で成立する、という意味でn-正則グラフ関係になっている
- Chapter 3 Rescaling and Normalization
- この極めて対称性のある変異に伴う団変数の変化が、何か単純に表現できれば良いと考えるのは素直な発想で、それが、Chapter 3 のRescaling and Normalization
- Chapter 4 Geometric typeとTropical algebra
- Chapter 5 Bordered surfaces, arc complexes, and tagged arcs
- この章はPart I の振り返り
- Chapter 6 は三角化の変異・推移が幾何的・位相的であることを述べ、Teichmuller spaceへとつなぐ導入。Teichmuller spaceはまだ出てこない
- Chapter 7 Lambda lengths on boardered surfaces with punctures
- Teichmuller spaceを導入するにあたり、lambda lengthと言う道具を導入する
- Bordered surfaceには n(arc数) = 6g(genus) + 3b(bordersの数) + 3p (puncturesの数) + c(borders上の点の数) -6と言う関係があった
- Teichmuller spaceでは、これを変形して n-p = 6g + 3b + 2p + c - 6と言う数を使う。このn-pがTeichmuller spaceの多様体次元
- (S,M)が与えられた時に、全ての点がcusp(とんがり)になっていて、それ以外のところは、全てガウス曲率が-1なhyperbolic になっているような幾何構造を考える。Teichmuller spaceはこのような条件を満たした幾何構造を納めた空間
- Teichmuller spaceに含まれる、ある一つの幾何構造(ある三角化に対して、点をcuspとし、それ以外の場所はガウス曲率-1とした幾何構造)を取り出して考えることにする
- この時、この三角化のarcはgeodesicになっている。このgeodesicになっているarcだが、cusp同士を結んでいるので、長さが無限大。これでは扱いにくいので、長さを定量する方法を導入する
- 全ての点の周りにhorocyclesを入れる。horocyclesと言うのは、双曲幾何学で使う「手」で無限遠にある点にたくさんの直線が集まってくるが、無限遠の点から等距離にある、それぞれの直線上の点を結んでできる、「無限遠点からの等距離点集合が作る輪」のこと(Wikipedia"horocycle"
- 全ての点が無限遠にあることになってしまっては、ある2点間距離と、ある2点間距離とが、どちらも無限遠となってしまい、比較不能になりそうだが、そこを解決すれば、2点間距離が決まる
- このhorocyclesを伴った(S,M)三角化の集合を納めたTeichmuller spaceをdecorated Teichmuller spaceと呼ぶ
- arcの長さ (と言う三角化におけると言うarcの長さは、正かもしれないし、負かもしれない。arcの両端点からのhorocyclesが交叉する場合は負、交叉しない場合(うまく測りやすいと言う事か・・・)は正
- その上で、を距離とする・・・こうすると、の正負によらず、距離は正となる(好都合)。これをLambda lengthと言う
- このLambda lengthsを全てのarcとボーダーの弧(boundary segments)とについて全て掛け合わせたものは正の実数をn + c 個、掛け合わせたものとなるが、それは、三角化のある一つの正の実数ベクトル属性である。これが、homeomorphismだと言う。。。連続的に変化させると、正の実数ベクトルも連続的に変化する、とそう言うことか・・・
- 今4つのarcs(かboundary segments)α、β、γ、δが四角形を作っているときに、その四角形の2つの対角線μとθがあったとき、が成り立つと言う
- horocycleはgeodesicではないが、長さがある。ある点の周りに二つのhorocyclesをとり、その長さの積が1になる関係にある2つのhorocyclesを相互にconjugateと言う。これも、この幾何では役割を果たす
- Chapter 8 Lambda lengths of tagged arcs
- tagged arcsを取り入れると、この関係が一般的に成立するように構成できる
- いわゆるarcの長さは、両端点を中心としたhorocyclesの交叉具合で正負を決めたとその指数関数化で決めた
- tagged acrバージョンを決めたい
- arcの両端点がplainなら定義は変えず、notched端点の時には、conjugateなhorcycleを使うことにする
- ちょっと記載がごちゃごちゃしている・・・。おそらく、うまく定義づけられる仕組みは成立しているのだが、それをスカッと説明する手立てが未整備なのではないかと思われる。tagged arcと言う概念がもしかすると、もう少しうまい方法に切り替えることができて、それによってスカッとするのではと言う予感
- Chapter 9 Opened Surfaces
- 内部点を破れ穴とし、そのborderに1点を加える改変をすると、内部点なしの、そこら中に1点持ちの破れ穴構造ができる
- この時、元の2つの破れ穴を結ぶarcは1本だったのに、破れ穴化したことによって、破れ穴をぐるぐる周回してからborder上の点に着地する場合が作れるので、arcの場合分けが(無限に)増える
- この破れ穴+点 に変えるのも別のタイプのdecoration
- horocyclesは、点からでるarcsに直行する曲線。破れ穴を作り、そこに点を置いた場合、その点には、スパイラル状のarcが存在する。そのarcたちに直行するような線は、穴boundaryに直角に刺入する線なので、これが horocycle??
- cuspとして見ると、無限遠にまで尖りたった様子のことだし、穴を開けてその上の点に向かって無限にぐるぐる巻きにして到達せんとするのも、無限遠点の表現である。そういう意味で、cusp扱いとスパイラル扱いは共通する
- Chapter 10 Lambda lengths on opened surfaces
- horocyclesを用いたlambda lengthの定義を、opened surfaceに拡張するための議論
- 開けた穴の周りのぐるぐる巻きをどう扱うか、ぐるぐる巻きの向きのこととか
- Chapter 11 Non-normalized exchange patterns from surfaces
- 三角化の変異の移り変わり具合と、lambda lengthと、団代数・団変数との関係に関する説明
- Chapter 12 Laminations and shear coordinates
- 異なる道具として、Laminationが登場する
- (SM)に等高線のようなものを入れる。等高線は自己交叉しないし、等高線同士も交叉しない
- そのLaminationのパターンは列挙可能な対象
- Laminationが定まると、arcに「数値」を与えることができるようになる
- Shear coordinates と呼ばれる数値になる。
- arcに付与される数値は整数で、三角化の変異とともに変化する対象としても扱える
- Chapter 13 Shear coordinates with respect to tagged triangulation
- 三角化変異を綺麗に正則グラフにするには、arcのtaggedが必要だが、それに対応して、Lamination, shear coordinatesの定義もしておく必要がある
- Chapter 14 Tropical lambda lengths
- Laminationを与えると、arcには、lamination等高線との交叉本数と関連した数値 shear coordinatesが現れる
- open surfaceで考えると、この交叉本数がtropical代数的な表現になるという話
- Chapter 15 Laminated Teichmuller space
- Teichmuller spaceは (S,M)に現れる三角化を配置した空間。これを、Laminationの入ったopen surfacesで考え、普通のtagged arcのlambda lengthと、tropical代数的なtagged arc のlambda lengthを取ると、各arcに二つのlambda lengrhsが付随することになる
- その2つの比が団変数となって団代数と繋がってくる
- Chapter 16 Topological realizations of some coordinate rings
- arcのlambda lengths の比は正なのだが、これが、totally positive matrixの団代数と繋がるという
- Chapter 16 Topological realizations of some coordinate rings
- ここまで議論してきた一般化された三角化(tagged arcを入れて、穴を開けてarcをliftした三角化)では、arcがpositiveになる
- それは、cluster variety X のうちのtotally positive partと解釈することが自然である
- 言い換えると、全ての団(変数)と団係数とが正であるようなXの部分集合に相当するということ
- そのことが、行列のtotal positivityとさらにそれを拡張したGrassmannianの団代数と対応づくらしい