ぱらぱらめくる『楽しもう射影平面』目で見る組合せトポロジーと射影幾何学
- 第 I 部 目で見る閉曲面の分類定理
- 第1章 閉曲面とその表現
- 第2章 いろいろな曲面と閉曲面
- 第3章 多面体グラフとオイラー標数
- 第4章 閉曲面の分類定理
- 第 II 部 射影平面とデザルクの定理
- 第5章 平面上のデザルクの定理
- 第6章 射影平面の再構成
- 第7章 射影変換
- 第8章 複比
第 I 部 目で見る閉曲面の分類定理
第1章 閉曲面とその表現
- 円板、境界、開円板、球面、球体
- 曲面:無限に大きくはなく、全体は2つ以上の離れた部分にわかれておらず、図形に接する点はその図形の点であり、図形のどの点Pにおいても、その十分近くの部分はPを中心とする開円板または半開円板に近似的に等しい
- 閉曲面は、Pの周りが開円板
- 位相同型:連続な全単射で逆写像も連続な写像が存在する関係。切って張り合わせたものも位相同型(ねじっても)
- 図形の(位相的)同値関係:同値関係は、2要素間の関係が、反射律、対称律、推移律を満たすようなもの
- ジョルダンの閉曲線定理:S2では閉曲線がS2を2分する(それに対して、T2(トーラス)上の閉曲線は曲面を2分しない)
- S2上の閉曲線同士が交叉するかどうか、T2上の閉曲線同士が交叉するかどうかという区別にもなる
- 展開図:閉曲面を切り開いた切断曲線が、展開図の境界として表れる。その境界は張り合わせ方に関する情報を「向き」として持つ。この向きのパターンが位相と対応する。展開図の境界にある張り合わせの向き情報に従って張り合わせるとき、張り合わせの順序によらず、一意な閉曲面になる(位相同型な閉曲面になる)
- 多角形・多辺形
- 任意の閉曲面は三角形の辺を貼り合わせてできる図形=2次元単体的複体の多面体と位相同型
- 表示式:張り合わせの向き情報を使って、閉曲面が代数的に表される。S2の場合は、四面体の展開図としてみればと表される。より簡略にとも表せる
第2章 いろいろな曲面と閉曲面
- 閉じていない曲面の表示式:例えば、円板の境界はどこも張り合わせないから、とというペアが存在しない。展開図が四角形なら、4辺は。単純化すれば、。リボンをねじらずに輪っかにするか、メビウスの輪にするかもととの違いで表示できる
- ジョルダン-ブラうわーの分離定理:閉曲面をとらえるのに、閉曲面上の閉曲線を用いたが、そこでは閉曲線が閉曲面を2分するかどうかが問題となった。閉曲面自身は、3次元空間において、「空間を二分するもの」と見る立場もある
- 具体的な展開図があると、それに対応する表示式がある。位相同型な閉曲面の展開図のバリエーションは、位相的に同じものなので、展開図同士に移りあう関係があり、表示式にも移りあう関係がある。表示式には代数的演算が付随していることになる
- 次元の制約:メビウスの輪(リボン)の境界はS1同相だが、3次元空間でみると、メビウスの輪の中心軸を2巡する。これを4次元に上げると、2巡しているように考える必要がなくなる。次元は位相を考えるときにこのような役割をする
- クロスキャップ:メビウスの輪の境界であるS1を「ほどいて」見せる工夫として紹介されるクロスキャップ。この考え方が射影平面にも用いられる。クロスキャップは現実に3D空間で作ろうとすると(メビウスの輪の境界をほどいた『ツケ』が最後の張り合わせに要求されて実現できないが、写真で2か所のQと2か所のRとをねじりながら張り付けたものがクロスキャップ。高次元では実現できる。青で示したのは、「表と裏」の区別。メビウスの輪では表と裏は連続的に推移するので、この模型でも白と青とが推移している
- クラインの壺もクロスキャップを使って表せる
- 射影平面:展開図を多角形・多辺形と考えるとき、辺のペアを貼り合わせることになるから、辺の数は偶数。一番簡単な展開図は、2辺形である。2辺がとなっているのは、S2。2辺がとなっているのが射影平面。このように、射影平面は「非常に基本的な閉曲面」であることがわかる
- 射影平面は、n次元の座標を表すのにn+1次元の同次座標を用いる。クロスキャップも実現するためには次元を上げる必要がある。そういう意味で、射影平面がクロスキャップを要する幾何的性質を持つと言える
- P2(射影平面)は4次元実数空間において反球面Sの上部をクロスキャップの形に閉じた閉曲面
- 射影平面の表示式は
- 向き付け可能性
第3章 多面体グラフとオイラー標数
- 多面体グラフ:頂点数、辺数、面数と位相の関係がオイラー標数
- 正多面体:頂点・辺・面がすべて等質なので、それに伴って、それらの数に特定の関係式がある
- 通常の正多面体はS2と位相同型な正多面体のことだが、正多面体が等質・対称であることとすれば穴があってもT2(トーラス)と位相同型の正多面体などもある。射影平面もある位相を持つ閉曲面なので、その位相に関する正多面体もある
- 射影平面を「視覚化する」:単位円板上に格子点を置き、単位円周上に等間隔点を打つ。近い点同士に辺を引くとグラフができる。射影平面では、円周の点に同一視が発生するので、その辺を加えて描く
第4章 閉曲面の分類定理
- 閉曲面の連結和:連結ために曲面上の閉曲線で穴を明け、穴同士を併せる。穴の位置は、位相的にどこへ動かしても、位相上同じだから、どこに穴を明けるかは無関係な処理である。展開図と表示式で連結和も説明できる
- トーラスと射影平面との連結和は、射影平面と射影辺面と射影平面(3つの射影平面)の連結和になる
- 連結和をとるときに、リボン(帯状の曲面)を考えることがある。そのリボンを「ハンドル」と呼ぶ
- 展開図と展開図との連結は、表示式の一部と表示式の一部とをつなぐことになるので、表示式の構成要素のどれをどのように(向きを考慮して)繋ぐかとしてあらわされるから、組み合わせ問題的に考えることができる
- 穴を明けて、そこに円板を戻すのは、元の閉曲面に戻すこと。穴を明けて、そこにクロスキャップをかぶせることもできて、それは位相非同相の閉曲面を作る
- 閉曲面の分類定理:任意ののいずれかになる、というもの。これでわかるように、射影平面、トーラス、球面の3つが閉曲面の「要素」
第 II 部 射影平面とデザルクの定理
第5章 平面上のデザルクの定理
- 3つの点は、ある線の上に共存しているとき、「共線的」と言い、3つの線が、ある1点を共有しているとき、「共点的」と言う
- デザルクの定理:3角形A1A2A3,B1B2B3を考える。直線A1B1,A2B2,A3B3が共点的であるとき、直線A1B1,A2B2,A3B3が作る、3つの交点P1,P2,P3は共線的
- これもデザルクの定理:3角形A1A2A3,B1B2B3を考える。直線A1B1,A2B2,A3B3が平行であるとき、直線A1B1,A2B2,A3B3が作る、3つの交点P1,P2,P3は共線的
- これもデザルクの定理:3角形A1A2A3,B1B2B3を考える。直線A1B1,A2B2,A3B3が共点的であるとき、直線A1B1,A2B2が平行であるならば、A3B3も平行。直線が相互に平行であるとき、それらの交点を考えることはできないが、平行線は無限遠点で交わると考えると直線A1B1,A2B2は相変わらず、(無限遠点を共点として)共点的
- これもデザルクの定理:3角形A1A2A3,B1B2B3を考える。直線A1B1,A2B2,A3B3が平行であるとき、直線A1B1,A2B2が平行であるならば、A3B3も平行。これは、3直線が平行~無限遠点で共点的と考えれば、同じ論理
- デザルクの定理は平面で考え始めてよいが、空間にも拡張できる
- デザルクの定理はその逆、双対もある
第6章 射影平面の再構成
- 射影平面は、デザルクの定理が成り立つという意味で実数2次元平面と同じだが、実数2次元平面では平行な直線は交点を持たないのに対して、射影平面は、任意の2直線が1つの交点を持つという性質を持っている
- その方向からの導入をするために、本書の第 II 部ではデザルクの定理から入っている
- デザルクの定理では、直線と点との関係から定めており、点の集合、直線の集合、点と直線との結合・接続関係から定まっている。この定め方を組み合わせ論的定義と呼ぶ
- 射影平面をこの立場から定義すると:
- 任意の異なる2点に対して、それらを通る直線が1本だけ存在する
- 任意の異なる2直線はちょうど1点で交わる
- 座標平面を部分として含む
- デザルクの定理が成立する
- 他方、射影平面は、「三次元空間内の原点を通る直線全体の成す集合」として定めることもあり、この立場から斉次座標などが導入される。これを「線形代数的な定義」と言う
- ちなみに、第 I 部で定めた射影平面は位相幾何的なものであり、「向きを持たない実二次元の多様体の基本的な例」となっている
第8章 複比
- 射影変換での不変量が複比
- 逆に言うと、「複比を変えない一対一変換が射影変換」