接続ホップ代数 Incidence Hopf algebras

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ディリクレ級数

  • 1以上の自然数を考える
  • 自然数を引数とする複素関数f(n)を考える
  • F(s) = \sum_{n \ge 1} \frac{f(n)}{n^s}をディリクレ級数と言う。sは複素数だから、これは複素関数
    • 関数f(n)の性質を複素関数的に表現したもの、と言う意味にとっても良い
  • リーマンの\zeta関数はf(n)=1のことで、それのディリクレ級数
    • \zeta(s) = \sum_{n \ge 1} \frac{1}{n^s} = \prod_{p prime} \frac{1}{1-1/p^s}と言う関係にあることは有名
  • ゼータ関数と言うのは、(一般的に?)要素を1に対応づける関数のこと(?)
    • 少なくともポセットにおけるゼータ関数の議論は、ポセットが作る全てのインターバルに1を対応づける関数をゼータ関数と呼び、それに対応するメビウス関数のことなどを扱う

メビウスの反転公式

  • 自然数nを引数とする複素関数g(n)があるとする
  • 今、自然数nを引数とする複素関数f(n)をf(n) = \sum_{d|n} g(d)とする。ただし、(d|n)は「nがdで割り切れる」ことを意味する
  • このときメビウス関数\mu(n)を使ってg(n) = \sum_{d|n} f(d)\mu(n/d)となる
  • ここで注意しておきたいことは、f(n) =\sum_{d|n} g(d) = \sum_{d|n} g(d) \zeta(n|d); \zeta(m) = 1, m=1,2,...であること
  • 以下の2式は、Dirichlet畳み込みと呼ばれる
    • f(n) =(g * \zeta)(n)= \sum_{d|n} g(d) \zeta(n|d) = \sum_{i\times j = n} g(i) \zeta(j)
    • g(n) = (f * \mu)(n) = \sum_{d|n} f(d)\mu(n/d) = \sum_{i\times j = n} f(i) \mu(j)
  • なぜDirichlet畳み込みと呼ばれるかと言うと、(g*\zeta)(n)と言うnを引数とする関数のディリクレ級数が、f(n)のディリクレ級数\zeta(n)のディリクレ級数の積になり、また,(f*\mu)(n)と言うもう一つのnを引数とする関数のディリクレ級数f(n)のディリクレ級数\mu(n)のディリクレ級数との積になるため
  • ちなみに、ディリクレ級数の式の作りがn^sと関数本体[(tex:f(n)]など)の積になっているため、掛け合わせてnになるi,jの組み合わせに関する足し合わせ(\sum_{i\times j = n})が、ちょうどそのような対応関係を(nが1,2,...と無限に続く限り/全ての場合を尽くす限り)満足させるからである
  • ここにも書いていたが、メビウス関数の書き方が悪かった…
  • Rでやっておく


ディリクレ畳み込みとメビウス関係・ゼータ関数の関係

  • (f*g)(n) = \sum_{i \times j = n} f(i) g(j)と言う関数の構成方法をディリクレ畳み込みと言う
  • 先に見たf(n) = \sum_{d|n} g(n)g(n) = \sum_{d|n} f(d)\mu(n/d)の関係は、f = g * \zeta \Rightarrow g = f * \muと言う畳み込みの点で逆変換になっている

ポセット

  • 自然数にポセット構造を入れようとすると、単純に、自然数の大小関係により(N, \le)と言うものが思い浮かぶ
  • しかしながら、違う構造も入れられる。nがdで割り切れるとき、nはd以上である、と言うルールもポセットを作る。(N, |)。ただし[tex:|は割り切れる、と言う演算を表すものとする(この辺りから、素数、公約数の匂いがしてくる…)
  • ポセットでは、「インターバル」と言うものが対象になるが、グラフっぽくイメージしたい時には、自然数に自然に入る大小ポセット(N, \le)を考えよう。この時、1はインターバル、2もインターバル、[1,2]もインターバル、[4,5,6]もインターバル
  • 割り切れるかどうかで自然数にポセットを作れば、[1,2,4,8]はインターバル、[1,2,6]も[1,3,6]もインターバル
  • 連続なポセット構造で言うなら、分岐のある道があって、どの道も一方通行である時に、ある点から別の点に行き着けるとき、その歩き方のそれぞれがインターバル

余代数 coalgebraと接続代数

  • ポセットが持つ、インターバル全体の集合が作るベクトル空間はに余代数が入ると言う
  • 余代数は代数の逆さまみたいな作りのもののことだが、それについてはこちらに別途、メモをした
  • ポセットの余代数における、余積は\Delta([x,y]) := \sum_{z \in [x,y]} [x,z] \otimes [z,y]だと言う
  • そして、そこにおける余積演算をしても変えない元であるcounitは\delta([x,y]) :=1 \text{if } x=y; \text{otherwise } 0
  • 余代数は要素の余積(一つの要素をとって、それが指定する複数の要素の演算結果を返す)があるが、それに対応する代数とその代数の積(複数の要素の演算結果が一つの要素を返す)とに対応づくと言う特徴がある
  • この代数と余代数をつなぐのが、畳み込み演算
  • ちょっとこの辺りから怪しいのだが…
  • 余積の書式は畳み込み演算に見える
  • その際の畳み込みは、行列の積になる
  • 単なる自然数の大小関係ポセットの場合には、自然数列x自然数列の行列を作れば、値の入り方は三角行列的になる

Reduced incidence algebra

  • 接続代数に少し制約を入れる
  • [x,y][x',y']とがisomorphicな時に\phi([x,y]) = \phi([x',y'])であるような場合に限るという制約
  • こうすると[x,y][0,y-x]とに同じ値を与える関数を考えることができるようになって、全てのインターバルに対する値を、0起源の値とすることができて、自然数の数列として扱えるようになる

接続代数でのゼータ関数メビウス関数

  • 全てのインターバルに1を対応づけるのが接続代数でのゼータ関数
  • ディリクレ級数的にf = g * \zeta \Rightarrow g = f * \muを満足するのが、メビウス関数
  • f([x,y]) = \sum_{z \in [x,y]} g([x,z]) \zeta([z,y])=\sum_{z \in [x,y]} g([x,z]) ならば g([x,y]) = \sum_{z \in [x,y]} f([x,y])\mu([z,y])
  • 足し合わせ要素の関係が(d|n)と言うような割り切るか否か、になっていないので、対応するメビウス関数の方もそうはならず
  • \mu([x,y]) = 1; \text{if } x=y そうでなければ\mu([x,y]) = - \sum_{z _in [x,y]} \mu([x,z])と言うような\muに関する再帰的定義を持つ関数になる
  • これは集合のinclusion-exclusion的な足したり引いたり関係に相当する
  • さらに、reduced incidence algebraになって、全てのインターバルが、「インターバル距離」のみで決まるようになると
  • f(y) = \sum_{z \le y} g(z) \Rightarrow g(y) = \sum_{z \le y} f(z) \mu(k); k = y-zのようになる
  • このとき、\mu = 1 (k=0), \mu = -1 (k=1), \mu=0 (それ以外) のように簡単になる

リーマンのゼータ関数の時のメビウス関数と、接続代数のメビウス関数

  • 自然数を単に大小関係でポセット化するなら、reduced incidence algebraで得られたメビウス関数を用いる事になる
  • 自然数素因数分解してやると、畳み込みのおかげで、素数に関するメビウス関数値の積を取ることで、割り算型(d|n)に対応したメビウス関数が得られる。k=1のとき(1度だけ含まれる素数の場合)には-1を掛け、k=0(登場しない素数の場合)には、1を掛け、k>1(2度以上、登場する素数の場合)には、メビウス関数値を0にする、ことになり、これが両者の関係