閉多様体 微分形式 外微分 閉形式・完全形式 ストークスの定理

  • 色々ある。入り口をどこにするかも選べる話題である。
  • 微分可能多様体から入ることにする
  • 微分可能多様体
    • 空間に滑らかな物体を考える。3次元空間におかれた曲面は2次元多様体であって、滑らかなので微分可能な2次元多様体
    • 曲面を球体のように閉じると、微分可能な2次元の「閉多様体
  • 微分形式
    • 微分可能な多様体の上にスカラー関数を置く
    • このスカラー関数がどういう関数か、というのを把握する道具立てが微分形式
    • スカラー関数は多様体の上で増減しているので、その増減の具合を表したい
    • ある位置での増減は向きと大きさを持ったベクトル。これを微分形式のうちの微分1形式と言うことにする
    • 微分1形式がさらにこの位置でどのように変化しているのかを定めるには、微分2形式を使う
    • 最初においたスカラー関数は微分0形式と言う
    • このように、微分可能多様体上のスカラー関数を把握するには、0形式、1形式、2形式・・・と段階式に分解できる
    • この微分形式を記述する道具に外積代数がある
  • 外積代数
    • n次元空間のための微分形式は1,n,n(n-1)/2,...,n,1個の要素で階層化された外積代数の基底で表される
  • 微分
    • 微分0形式の変化の具合を知るには、「微分」して微分1形式で表す
    • 微分k形式の変化の具合を知るには、「微分」して微分k+1形式で表す
    • その記号が "d"
    • 多次元のときには、座標系を定めて軸ごとに偏微分する、というやり方があるが、「変化」の具合というのは、座標系を定めなくても存在するものなので、その「変化全般」を一塊で取り出そうとするときに"d"を使って取り出す。それを「外微分」と言う
    • 偏微分のように「成分」に分解できるものなので、"d"で外微分を一塊で取り出したとしても、表記するには、成分ごとの項の和とする必要がある。そのときの成分が外積代数の基底
    • 微分を2回繰り返すと0になる
  • ストークスの定理
    • 微分可能多様体のある部分Mについて微分k形式wを積分するというのは次のように表現する
    • この値は、Mの境界\partial Mについてw積分したもの\int_{\partial M} wと等しい
    • これをストークスの定理という
    • 特に、Mが閉じていて境界がないときには、\int_M dw = \int_{\partial M=0} w = 0
      • 1次元の閉多様体の場合は、曲線に沿ってぐるりと回ると0になるし
      • 2以上次元の閉多様体の場合は、境界をぐるりとなでると、その「総和」は0になる、ことを言っている
  • 鎖複体 chain complex、カーネルとイメージ
    • 微分0形式を微分して微分1形式に、微分k形式を微分して微分k+1形式に、とつなげる。外積代数を基にしているので(外積代数をもとにすれば)、ある段階で0になる。k形式にはそれぞれ基底がある
    • この段階的に0から大きい方へ上がることもできるし、大きい方から下がってくることもできる
    • その全体にうまい代数構造を入れることもできて、これを鎖複体と呼ぶ
    • 段を上ったり下りたりすることは、基底が異なる空間の間の写像である
    • 今、外微分dをこの写像であるとすれば、dw微分k形式wのdによる像(image)でそれは微分k+1形式の空間にある
    • 写像においてカーネルとは、写像した先が0であるようなものなので、外微分においてd(dw)=0であることを思い出せば、微分k+1形式dwへの外微分という写像について、dwカーネルである
    • どうして、像とカーネルという用語が大事かと言えば、鎖複体はddw=0となるようなつながり方をしている対象のことだからである
    • 微分k形式では基底があって、それが張っているベクトル空間がある
    • また、カーネルのように外微分して0になるような微分形式を閉形式と言い
    • ある微分k形式があって、それが微分k-1形式の外微分になっているとき、微分k形式のことを完全形式と言う。上でいうところの像に対応する
  • 鎖複体と単体的複体
    • 単体を集めたものが単体的複体。ただし1つの単体ともう1つの単体とはそれぞれの単体の構成要素である単体を共有するように集まっている
    • この単体的複体をk単体ごとに層をなしてとらえるとき、k単体の層、k+1単体の層などが、鎖複体となっている
    • そしてそこでの層のシフトは「k単体集まり(k-chain)から、それの境界をなすk-1単体の集まり((k-1)-chain)へのシフト」に相当する
    • したがって、外微分という作業と、単体的複体の境界を取る、という作業とが対応づいている
    • 微分を2回繰り返すと0になる(ddw = 0)は、この単体的複体に関する鎖複体にも当てはまる。単体的複体のk単体の集まりの境界に相当するk-1単体の集まりを取り出し、さらに、それらの境界に相当するk-2単体を集めると0になる。ただし、ここで各単体には符号がついていて、その符号づけの方法は、外積代数で符号づけが大事であったのと同じ要領となっている。
  • カーネルと像の関係と、穴の数を知ること〜トポロジー
    • 2回の外微分〜境界を取ってその境界を取ることは0になるので、1回外微分したもの〜境界はカーネル(閉形式)である
    • では、カーネルは必ず、何かの外微分〜何かの境界なのか、と言うとそうとは限らない
    • この「境界」ではないけれどもカーネルになるものが位相的な「穴」であることがわかっている
    • 単体的複体で言うところの「穴」は中身が抜けた単体のこと
      • あるk単体があって、その構成要素であるk-1単体がすべてそろっているとき、k単体は充実している。そうではなくて、同じくk-1単体がそろっているのに、それに対応するk単体が「ない」とき、それを穴、という
    • カーネルや像は鎖複体では、それぞれの「層」に基底があってそれらが張っているので、穴の個数は、基底の数の差としてあらわれる
    • それを、H = \frac{Kernel}{Image}というように「商」としてとらえるのが、代数流
  • 組み合わせとトポロジー
    • n個の要素の集合の冪集合は2^n個の要素を持つが、それらのいずれかが存在する、という状態は、単体的複体として表すことができる
  • 離散化
    • 微分可能多様体を三角化して離散化し、その三角化メッシュの点・辺・面…を微分k形式に対応付けて、離散的に多様体の性状をとらえることができる
    • 形を問題にするときは、閉多様体を三角化し、充実オブジェクトの場合は充実したオブジェクト全体の三角化をする
    • 充実オブジェクトの場合には、それがいくつの穴を持つかなどがトポロジー的な対象となる
    • 表面〜閉多様体の場合には、その閉多様体上のベクトル場解析や、閉多様体の形の変化を扱うことができる
    • 離散化することで計算機による演算処理が具体化する
  • 三角化〜単体的複体〜Connection matrix
    • 組み合わせにしろメッシュ化にしろ、データ構造としては単体的複体
    • この情報はconnection matrixと呼ばれる行列として保持できる
    • k単体とk+1単体との関係をk単体の数を行数に、k+1単体の数を列数にし、それぞれの帰属関係を±1で表し、非帰属状態を0で表した行列がconnection matrix
    • さらに、このconnection matrixは離散的に外微分をする計算に該当することから、微分可能多様体の離散的微分形式演算はconnection matrixを介在させた線形代数演算とすることができる
    • さらに、connection matrixがk-chain(鎖複体で言うところのk単体の集まり)と(k-1)-chainとをつなぐこと、このconnection matrixがカーネルや像の次元を決めていることから、カーネルであって像になっていないということが何次元に相当するか(いくつの「穴」があるか)は二つの隣り合うconnection matrixのランクの差として算出することができる
  • その他
    • 外積代数とホッジ作用素と線形汎関数内積
      • 外積代数は、基底が1,n,n(n-1)/2,...,n(n-1)/2,n,1のように上下対称になっている
      • 微分k形式に微分n-k形式を作用させると微分n形式になり、それはスカラー(のようなもの)
      • スカラー(のようなもの)を返すので、この作用はスカラー場へのマッピングである。そしてそのような作用を持つ関数を線形汎関数と呼ぶし、それは見方を変えると微分k形式(微分k形式の基底が張ったベクトルのようなもの)に、同じ長さの微分n-k形式(ベクトルのようなもの)を掛け合わせて、スカラーを出しているから、内積をとったもののようにも見える
      • このように微分n-k形式を作用させることを、k形式に便宜上読み換えて内積をとる作用と読み換えるとき、微分n-k形式のオブジェクトにスターをつける習慣があり、それがホッジスターとかホッジ作用素とか呼ぶ