SLEという方程式

  • Schramm-Loewner Evolution(SLE)という1次元ブラウン運動を駆動関数とする1階の微分方程式について勉強することにする
  • 第一の資料はこれ
  • 第二の資料はこれ
  • 先々でわかりたい(かもしれない)のはSLE6の球面展開に関するこれか?
  • 複素関数g_t(z),z=x+iyに対する\frac{\partial}{\partial t} g_t(z) = \frac{2}{g_t(z)-U_t}という微分方程式が登場する。ただし、t=0に原点を出発し、時刻t>0での位置B_tとしてU_t=\sqrt{\kappa}B_tというような正のパラメタ\kappaによって表現される『実軸上の運動』
  • この形で表される曲線の共通点は「フラクタル性」。全体を相似変換(並進、回転、膨張、収縮)させても、その統計量が変わらないという対称性。さらに、全体を一斉に相似変換するのではなく、場所ごとに異なる相似変換をしても同様である。そのような一般化された相似変換は「各点における2曲線のなす角を保存する」等角写像であって、共形変換と呼ぶ。共形変換は「複素関数の分数を使った変換(こちら)」であることを思い出せば、複素関数の分数を使った微分方程式が共形変換で統計量を不変とすることと何か関係しそうなことと響きあう。また、共形変換と言えば「微分可能な複素関数は(…)共形変換を与える」という話と対応づいて、複素平面でSLEについての議論をすることの意味合いもわかる。そこには、リーマンの写像定理(複素平面のある部分集合には別のそれへの共形写像がある、みたいな)話ともつながっている
  • さて、複素平面のうち、虚部が非負の半平面の曲線が原点から出発しているとする。その曲線のある時刻までをとりだすと、その曲線が実軸と囲む部分と曲線とを合わせた部分と、複素半平面のうち、それ以外の部分とに分けられる。リーマンの写像定理から、「それ以外の部分」を共形変換して、複素半平面全体にすることができる。さらに、そのような共形変換は、ある制限を入れると一意に決まる。ということは、曲線の先端実軸上の1点に対応付けられるから、結局、複素半平面を動く曲線は実軸上の点の動きであることになる(この『実軸上の運動』はSLEの部分方程式の分母に出てきた実軸上のU_tに対応する
  • 曲線を定める微分方程式と、曲線を実軸上の動きとには関係があることを示せるという
  • このような共形変換(複素関数の分数で表される)に現れる複素関数は、SLEの微分方程式複素関数をある初期条件で解いた時の解なのだ、という。いかにもそうなりそうな感じがする
  • 扱ってきたのは「複素半平面上の曲線」だったのに、SLEの式と実軸上のブラウン運動とでは、「曲線」が出てきていなくて、共形変換と「実軸上の動き」だけだというのが面白い(らしい)
  • このSLEは駆動ブラウン運動の係数\kappaによって自己回避ランダムウォーク・実軸に接することのある酔歩・平面埋め尽くしに質的に対応付けたり、それらの中間的曲線であると表現されるのだが、実は、この\kappaは、多次元空間における酔歩とそれを表した伊藤の公式から得られる、「原点に戻るまでの時間」に関する質的な違いと対応していることが、確率微分方程式の相互関係を調べることで確認できる。ちなみにこの「原点に戻るまでの時間」を考えるには、原点からの距離に関する確率過程を扱うことになる(非負実数)が、それはベッセル過程と呼ぶそうだ(ベッセル過程に関する日本語のウェブ資料は、この記事の冒頭に挙げた2つめの資料になるので、ベッセル過程については、次の資料までは深入りしない)