ぱらぱらめくる『作用素環の考え方』

  • 作用素環の考え方(PDF)
  • 作用素環とは「ヒルベルト空間全体で定義された有界作用素であって、自己共役演算に関して閉じているような作用素の集合であって、その集合が置かれているバナッハ空間の中で位相的に閉じているもののことである。そしてそれは完備にもなる。この位相的に閉じているというときの位相のとり方で異なる作用素環が作れる。代表例はC*環とフォン・ノイマン環」と言える。そのことが以下の手順で説明されている。
  • 作用素環論は代数でもあるが、関数解析
  • 代数の立場から:「なぜ、作用素の『環』を扱うのか」
    • 数を作用素に置き換えるという量子力学の要請
    • 線形作用素(行列)には、逆元を持たない元がたくさんあるので、「逆元を持たない元を体はただひとつ持つ」とは相容れようがない。。。体的に扱うのは諦めて、環で行くことにする
    • 量子力学に現れる作用素は非有界になりうるが、非有界を扱うと定義域で苦労することになる。それを回避するべく、「ヒルベルト空間全体で定義された有界作用素」に限定して環を考えることにする
  • さらに2つの条件を付けて考えることにする
    • 1つめ:「自己共役」
      • 量子力学では自己共役作用素が観測可能量を表すから、「自己共役性」についてうまくできた環がほしい
      • (自己共役作用素に限定するというのも作戦としてありかもしれないが)そうはせずに、「ヒルベルト空間全体で定義された有界作用素」であって「共役転置演算がうまくいく=無限次元版の共役転置演算で閉じている」ような環とすることにする。これで定まるのが*環
      • *演算を考えることができるためには、ヒルベルト空間が定める内積の存在が本質的
    • 2つめ:「完備性」
      • 関数解析の手法を使うとき、「完備性」を備えていることは重要。そのため、完備性を持った対象の環としたい
      • 完備性を持つということは、近似的に元を作る・定めることを可能にする
      • ヒルベルト空間上の有界作用素作用素環を考えるているとき、「ヒルベルト空間の上の有界線形作用素全体がバナッハ空間をなす」ことになっているので、このバナッハ空間の中で、扱う作用素が適当な位相で閉じているようにすれば、それが完備性を持たせることになるので、条件としては、バナッハ空間の中で位相的に閉じているという条件を付けることに相当する
  • 「完備性」〜「バナッハ空間の中で『適当な位相』で閉じている」
    • 位相のとり方に2種類ある
      • ノルム位相(ヒルベルト空間の単位球上の一様収束が定める位相)からできるのがC*環
      • 強収束の位相(ヒルベルト空間上の各点収束が定める位相)からできるのがフォン・ノイマン
        • 強収束の位相は、ノルム位相より弱い位相。位相が弱っちくても収束できる、ということは、収束するという性質がより強くないと行けないので、フォン・ノイマン環の収束性はC*環の収束性より強くなる。したがって、フォン・ノイマン環はC*環に含まれる
      • しかしながら、フォン・ノイマン環はC*環だとは言うものの、非典型的なC*環なので、C*環とフォン・ノイマン環は2つの別の環として説明することが便利らしい
  • 環と空間
    • 可換環と空間
      • 空間の上に関数を対応させると、その関数たちは環をなす。この環と可換環とが同型であるので、可換環と空間とは同じものと考える。空間より(可換)環のほうが実体と考えることもある
      • 可換C*環:コンパクトハウスドルフ空間上の複素数値連続関数環が対応する
      • 可換フォン・ノイマン環:測度空間上のL^\infty関数環が対応する
    • 可換環と空間
  • 作用素環を扱いやすく制限して考える〜従順性
    • 離散群があると群環を経由して作用素環が作れるという事実がある
    • 離散群はいくらでも変なものが作れることで有名であることからも分かる通り、作用素環にもいくらでも変なものが作れてしまい、分類しにくい〜分類の役に立つような不変量が定まらない
    • 作用素環に条件をつけて不変量が取れるようにするという作戦もあり
      • 実際、非可換幾何のA. コンヌは、解析的に良い条件を仮定した作用素環には、簡単な不変量が完全不変量となることを示した
      • このような条件を満たすことを「従順」と言う
      • 従順なC*環は完全不変量を持つはずで、それによる分類定理を得ようとしているのがElliot program
    • 従順でない作用素環は分類しがたいが、従順でないフォン・ノイマン環について「違う作り方をしたフォン・ノイマン環は本当に違う」というような理解の仕方でそれなりの分類的考え方が導入されている
  • これ以降は、物理っぽいので割愛