多項式環

  • 「体」の話だけれど「多項式『環』」という表題。体と環は違うけれど、「どっちは何で、こっちはこう」とわかったつもりで、自由に行き来してもよい範囲なら、ま、いいから加減に書いても「正しくわかっているひと」は大丈夫だし、「よくわかっていない人は違いを云々しても疲れるだけ」という、ものすごく大雑把な綴り方とする。〜「違いがわかる人は間違いがなんだかわかるし、違いのわからない人は、そこを無視して流れに乗っている方がお気楽」とでも言いかえる「いい加減編」。
  • 巡回群フーリエ変換の話を進めるために双対群について扱ったが、さらに多項式環についても見ておく必要がある(らしい)
  • 多項式というのは、\sum_{i=0}^d a_i X^iと表される式のこと。ここでa_iは係数と呼ぶが、係数を何にとるかは色々と変えられる(整数、有理数、実数、複素数…)。
  • 多項式環というのは、F[X]と表記するのだが、これは、Fという体(整数だったり有理数だったり…)に『変数X』を付け加えたもの、という意味である。「付け加える」ことを「拡大する」と言い換えれば、「体を拡大した」とも言う。
  • どうしてこれが「多項式環」なのか、というと、係数にFを持ってきて、変数のべきX^0,X^1,...との線形和を取ったものっていうのは、結局、すべてのFの要素とXとを自由に掛けたり足したりしてできるすべて、ということで、それが「体」だから
  • なのでF[X]と見たら、「多項式環」なんだ、と思えばよい(ただし、環の条件を満足していることは確認しないと…)。
  • そんな多項式の集まりF[X]は、FXを加えたもの。
  • 一方、実数が作る計算の世界は「実数体」。それに虚数記号iを加えたものが「複素数体」。こちらも何か一つを加えています。
  • ここをつなぐものは何か、という話。
  • 多項式の集まり』を「加えた要素(ここでは虚数記号)」と密接な関係のある多項式で制約した何かを、多項式の言葉で言うと、F[X]をその制約する多項式の商(quotient)として定義した、quotient ring、と言いましょう、と言うらしい。
  • 虚数記号と密接な関係にある多項式とはX^2+1(=0)ですが、\frac{F[X]}{(X^2+1)}と書いたものがそれ。
  • じゃあ、虚数記号は「特別」で、これしかやりようがないのか、というと、一般化が好きな数学でそんなわけはない。
  • じゃあ、どうなるの?となって、巡回群と出会う話が、以下の話。
  • ここで商を取る多項式には、制限があって、「多項式の世界の素数」のような多項式でないといけませんよ、というのが"irreducible"と表現される。
  • 巡回群では、歯車が回ってd回の手順で元に戻る、という基準があるから、exp^{2\pi i X/d}で表される複素数が大事。この複素数には対応する多項式がある。その多項式多項式全体の商をとることは、その複素数を足して「拡大する」ことである。
  • 巡回群とそれを支える複素数(回転1回分に相当する複素数)に対応する多項式は「円分多項式 cyclotomic polynomial」と言う。この円分多項式というのは、d回、回って元に戻る、ということなのでX^d=1もしくはX^d-1=0が対応する。
  • この円分多項式には素数が関わってくる。なぜかと言うと、d回、回って元に戻る、と言う場合に、たとえばd=12だとすると、2回、回って戻るときの円周上の点は、d=2のときにすでに考慮してあり、3回、回って戻る時も同様・・・というように、「目新しい」ものが出てこないようにしたい、という「気持ち」があり、それを表そうとしたのが円分多項式だからである。その性質を使うと、逆に、X^d-1=0をirreducible な整数係数多項式の積に分解することができて、その個々の多項式が円分多項式
  • さて、F[X]はXの多項式であった。このXの代わりに巡回行列Kを入れても、線形計算に支障はないから、F[K]とする。ではこれに対応して、K^d-1=0という式が成り立つから、それの商をとることもできて、その環というのはFに"複素数"を加えたものである、というのは、上述のアナロジー
  • このように進むと、巡回群、その行列表現、その行列の作る演算世界、というのが、無駄に広い部分がなく、過不足ない演算世界として定義できる。そうすると、その上で「フーリエ変換級数分解」をしてやりましょう、という話が「式」扱いになってきますよ、というそういうかたちで文書は進んで行きます。