数理生物学を俯瞰する２−１〜生物学・数学カリキュラム１〜

こちらで挙げた宿題をまずは、一歩一歩、解決しよう
こちらは数理生物学のWiki記事であるが、その中で、数理生物学が必要とする・関連する数学の範囲を次のように書いている
論文 "Mathematical Biology Modules Based on Modern Molecular Biology and Modern Discrete Mathematics" CBE Life Sciences Education (The American Society for Cell Biology) 9 (3): 227–240を引用して選んだ項目である。
この論文では、これらの領域の教育カリキュラムの構築について書いている。その様子を眺めてみることにする
歴史的経緯
- 微分積分学・微分方程式学への偏り
  - 差分方程式・微分方程式の生物システムへの適用はそれなりの成功を収めている(生態学・疫学・生理学・薬理学)
  - その結果、生物側から入ると微分積分学・微分方程式(学)に偏る傾向がある
  - 数学と生物学との関係は、数学と物理学とのそれのように「近しい関係」としての歴史がないので、数学側から入ると生物学を学ぶ機会がほとんどないし、入るとすると微分積分学・微分方程式学からやいってくる
解析学系 vs. 代数学系
- 上述の歴史的経緯から解析学系と代数学系を比較すると解析学系優位となっているのが現状
  - ※筆者注「統計処理から入ると『代数学系』が中心となる。この点は、もしかすると『遺伝統計学』が数理生物学の歴史的経緯の中で少数派としてのメリットを発揮する点なのかもしれない(こちらのブログはどう見ても、以下の「代数学系」の記事に偏っている…)」
- ここで言うところの(基本的な)代数学系は、初歩的なものだが、以下を含む
  - 離散数学
  - グラフ理論
  - 確率論
  - 線形代数学
  - 多項式代数学
  - 抽象代数学
  - 代数幾何学
    - 幾何学図形によるパターンと関係の把握を含む
２０世紀末から２１世紀初めのalgebraic statisticsによる成果
- 微分積分学・微分方程式学による数理生物学の成果が２０世紀(の比較的早い時期)であるとすると
- Algebraic statisticsのそれは、２１世紀に成果として出ている(大腸菌の代謝系の有限dynamic systems model)、アブシシン酸シグナルパスウェイ、比較ゲノム学の配列比較への応用、ウイルスパーティクルのアッセンブリにgeometric constraint theoryを応用、など